楽天やアリババが、今のインドで生まれている
資金調達をしたスタートアップの業種別割合をグラフにしましたが、件数ベースではテクノロジー(IT関連)、ソフトウェア、フィンテックなどのデジタル系が企業の半数近くを占めます。
とりわけコンシューマーテック(消費者向けデジタルサービス)で、ビジネスの拡大を大きくバックアップしているのが、政府主導で整備した「UPI」という仕組みです。UPIは日本の全銀システム(銀行間送金ネットワーク)を24時間365日休まず動かし、ノンバンク事業者にも開放し、即時決済を可能としたような仕組みです。
これでQR決済やオンライン決済が可能となり、簡単にスタートアップでもデジタルサービスのマネタイズが実現できるようになりました。実際、UPIの月間取引件数は、コロナ禍前の数千万件から20億件規模に急増しており、デジタル系サービスの普及を後押ししています。
そして注目すべきは、サービスを支えるエンジニアの層の厚さ。プログラマーの層が、本当に厚いのです。インドでは1990年代からオフショア開発でITの仕事のマーケットが拡大し、しっかり社会に根付いていました。IT・BPM(ビジネスプロセスマネジメント)業界は2023年時点で約540万人を雇用し、GDPの7.4%を占める規模にまで発展しています。
カーストの影響を受けないITの仕事が大人気
日本との違いで言えば、プログラミング教育でしょう。インドにはカースト制が残ってます。カーストによって職業選択に少なからぬ制限がかけられるのです。だから、カーストにはないITの仕事は大いに魅力があるのです。みんな理系でプログラマーを目指す。
それこそ、小学校からプログラム教育が行なわれているところもありますし、中学校(クラス6)からはプログラミング教育が必修化されています。そして、親もプログラム教育を受けさせたいと考えている。こうして、分厚いプログラマーの層ができました。
加えて、英語教育にも熱心なので、インド人の多くは英語ができます。プログラム言語は英語なので、英語ができる優位性は、プログラマーとしても大きい。
おまけに教育全般にも熱心です。EC、フィンテック、SaaSサービスが資金調達をしたスタートアップのトップ3ですが、実は次に来るのは、エドテックです。エドテックとは、教育(Education)と技術(Technology)を組み合わせた言葉で、教育を支援する仕組みやサービスを指します。
教育領域は産業としても大きな注目を集めており、2025年に上場したオンライン教育で大きく成長したPhysics Wallahは、時価総額で5000億円前後、売上も500億円以上という規模感で、しっかりとビジネスで成長を見せている好例です。
インドのマーケットはまだブルーオーシャン
また、ロジスティクスも注目です。ECが拡大すればモノを運ぶ必要があります。EC事業者は最新技術でデジタル化された一方、ロジスティクス事業者は役割ごとに分断され、旧来の非効率な物流を続けていた。そこに目を付けた多くのスタートアップが誕生し、倉庫から配送・返品管理まで、一気にテクノロジーの力で進化を遂げました。
例えば、「Delhivery」はECの中でも急拡大するD2C(Directto Consumer)に目を付け、デジタル化したフルフィルメントサービスで急成長。ユニコーン企業となり、今ではインドを代表する上場物流会社の1つとなりました。
また、工場や倉庫における複雑な自動ピッキングのシステムもその1つです。アマゾンの倉庫が自動化されたニュースを見た人も多いかと思いますが、日本企業の中には「GreyOrange」のようなインド系のピッキングシステムを取り入れている会社も少なくありません。同様に、外資系企業でも採用している会社があります。
いずれも先進国ではすでに大きなマーケットになっていますが、東南アジアではすでに雌雄が決して集約されてしまっているところがあります。しかし、インドでは、集約し切る直前のタイミングなのです。そこで、これから勝負を懸ける状況にある。
日本で言えば、楽天やGMOが出てきた1990年代後半のイメージです。中国で言えば、アリババや百度(バイドゥ)が出てきた2000年代半ば。中国の20年遅れ、日本の25年遅れでスタートアップが盛り上がっているのがインドなのです。
難波 昇平
AAIC(Asia Africa Investment and Consulting)
パートナー・取締役
椿 進
AAIC(Asia Africa Investment and Consulting)
代表パートナー・CEO



