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「1億円あれば自由になれる」はずだった
「48歳で会社を辞めた日が、人生で一番うれしい日でした」
東京都内に住む福田健一さん(48歳・仮名)。大学卒業後、大手メーカーへ就職。しかし、組織で仕事をすることに馴染めない自分が常にいたと語ります。早々にFIREを目指すようになったといいます。
独身を貫き、家賃は5万円。極力固定費を抑える生活をしてきました。年間300万~400万円を投資信託や米国株へ積み立て続けました。株価上昇も追い風となり、47歳で金融資産は約1億5,000万円に到達。退職金約1,200万円を受け取ったタイミングで会社を辞めました。
年間生活費は約300万円。「4%ルールを前提に考えたら、十分暮らせるはずだ」と考え、念願だったFIREを実現します。
平日は趣味の映画鑑賞の時間。午後は健康のためにジムに通っています。休日は、心許せる友人と会ったり、小旅行に行ったり。時間に追われない生活を楽しんでいました。
もう会社員に戻る必要はない――その事実だけで幸せだったといいます。
しかし、夏の帰省を経て、その考えが揺らぐことになります。実家は九州の地方都市。父・昭さん(79歳・仮名)は年金月18万円、母・陽子さん(77歳・仮名)は月7万円ほどの年金を受給しています。夫婦合わせて約25万円。ローンもなく、これまで特に心配することはありませんでした。
ところが帰省初日、その認識は崩れます。玄関を開けると、父が母の腕を支えながら歩いていたのです。実は母は春先に軽い脳梗塞を発症。片側の手足のしびれや、動かしにくさが残っているといいます。
「すぐに駆け付けようと思ったら、父が『そんなに大事ではない。いつものように、お盆のころに帰ってきたらいい』と。その言葉をそのまま受け取って帰ってきたのですが……」
母は「本当はひとりで歩ける。ただ万一があると大変だと、お父さんが支えてくれるの」と笑います。福田さんは「きちんと言ってほしい、自分は会社を辞めて時間はあるのだから」と、少し怒りを込めて言います。しかし父は「まだ心配される年齢じゃない。それより心配なのは、お前のほうだ。何かあった際に支えがないからな」と、チクリ。
厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、要介護者のいる世帯で、介護者と要介護者がともに65歳以上の「老老介護」の割合は61.9%、75歳以上同士は37.1%に達しています。また、陽子さんが発症した脳血管疾患(脳卒中)は、要介護者となった主な原因の12.5%(要介護5では最多の27.6%)を占めます。
一方で、高齢者世帯における「単身世帯」の割合は53.2%に上り、将来的に独身の福田さん自身が「支え手のない高齢者」となるリスクも窺えます。