「このままでは持たない」…家族を支える現実と迫られる選択
同居から半年ほどが経った頃、加藤さんは家計の見直しを迫られました。
「このまま続けたら、確実に貯金が減っていく。頭では分かっていたんです」
問題は、それをどう伝えるかでした。娘は精神的にも不安定な状態にあり、「負担になっている」とは言い出しにくい状況でした。
「言ったら追い詰めてしまうんじゃないかと…」
一方で、現実は待ってくれません。今後、医療費や介護費が増える可能性もあります。老後資金は「自分たちのため」に確保しておく必要があります。
「自分たちが倒れたら、結局は娘に負担がいく。それでは意味がない」
そう考えた加藤さんは、妻と話し合いのうえ、支援のルールを見直すことにしました。具体的には、生活費の一部を娘にも負担してもらうこと、一定期間での自立を目標にすることなどです。
「完全に突き放すことはできません。でも、ずっと支え続けることもできない」
ある日、加藤さんは意を決して娘に話しました。
「一緒に暮らすのはいい。ただ、この先どうするかは考えないといけない」
娘はしばらく黙っていましたが、やがて小さくうなずいたといいます。
「分かってる…迷惑かけてるのは」
現在、娘は勤務時間を増やし、生活の自立に向けて動き始めています。まだ完全ではありませんが、「依存しきらない関係」に変わりつつあります。
一方で、夫婦の生活も変わりました。
「余裕は確実になくなりました。でも、家族だから仕方ないとも思っています」
民法877条では、直系血族間には扶養義務があるとされていますが、その範囲は無制限ではなく、「生活に余裕がある範囲での扶助」と解釈されています。つまり、自分たちの生活を維持することも同時に重要です。
「助けたい気持ちと、自分たちの現実。その間でずっと揺れています」
老後の安心は、数字だけでは測れません。どれだけ備えていても、家族の事情によって状況は大きく変わります。
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