海外銀行口座の利用にあたっては、当然のことながら多くの注意点がありますが、今回はこれまでと同様、香港のHSBCを例にとり、特に日本の銀行と異なる部分に焦点を当ててご説明します。

口座のグレードにより維持手数料も通常は異なる

海外銀行の口座で、まず気をつけておきたいのが「口座維持手数料」の存在です。日本の銀行の場合、口座にお金が入っていなくても何の問題もありませんが、HSBCを含めてほとんどの海外銀行では、口座残高が一定水準を下回ると、口座維持手数料が必要になってきます。

 

通常、口座に何種類かのグレードがあるのも海外銀行の特徴で、HSBCでは富裕層向け、準富裕層向け、一般向けの3種類の口座があります。それぞれ受けられるサービスが異なるのですが、このグレードごとに求められる口座残高が変わってくるわけです。

 

例えば、富裕層向けの口座はプレミアと呼ばれ、口座の平均残高は100万香港ドル以上とされています。もし、この水準を下回ると、毎月380香港ドルの口座維持手数料が預金残高から差し引かれるわけです。年間ベースで考えると、そこそこの金額となってしまいます。

 

残高不足のままずっと放置しておくと、どんどん口座維持手数料が引かれ続け、最終的には口座残高自体がマイナス(赤字)になります。こうなると、口座は強制解約となり、その後数年間は口座開設ができない状態になってしまうのです。

 

 

口座凍結を防ぐため1年に1度は口座を動かそう

では、所定の口座残高を超えていれば、あとは放置しておいても大丈夫かというと、そうでもありません。これも日本の銀行と大きく異なる点ですが、1年ぐらいの間、口座が動かない状態が続いただけで、口座凍結の処置が取られてしまうのです。

 

これを防ぐには、少なくとも1年に1回程度は、入出金をしたり、定期預金を組んだり、ファンドを買ったりという行動を取らなければなりません。簡単な方法のひとつは、ゆうちょ銀行やセブン銀行などのATMを使って1万円なり2万円なりを引き出すことですが、こうしたちょっとした努力(?)を怠ると、あえなく口座凍結という事態に陥ります。

 

いったん口座凍結になれば、本人が店舗まで出向いて(つまり、香港に渡航して)凍結解除の手続きを取らなければなりません。もちろん、基本的には顧客保護のための凍結措置であり、預けているお金が没収されるようなことはありませんが、この凍結状態を何年も放っておけば、最終的にはすべて没収されてしまいます。

 

これはあまり知られていないことですが、銀行に預けているお金の請求権には「時効」があります。法律で決められた一定期間にわたって引き出しを求めなければ、没収されても法的には文句を言えないわけです。日本の銀行では、よほどのことがない限り時効を適用することがありませんが、香港の銀行はこの点、非常にドライだと考えるべきでしょう。

 

もちろん、口座凍結等の措置が行われる場合には、HSBCから事前に文書やメールで警告がきます。しかし、その記述はすべて英語および中国語であり、ついつい見逃してしまう人も多いはず。それだけに、この口座凍結という措置が存在することについては、HSBCを利用する限り、常にどこかで意識しておきたいところです。

 

 

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