日本の高齢者世帯において、生活の困窮が深刻な課題となっています。 物価の高騰が家計を圧迫するなか、長年働き続けて受給した公的年金だけで生活を維持することは、もはや容易なことではありません。かつては「悠々自適の隠居生活」と形容された老後ですが、現在は多くの高齢者が不足する生活費を補うため、働き続ける選択をしています。
死ぬまで働くしか…「年金月15万円」66歳男性、早朝は「時給1,580円」の清掃、昼からは「時給1,280円」のファミレス。バイト掛け持ちでも生活苦の厳しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

統計から見る「働く高齢者」の増加と家計の厳しい実態

内閣府『令和7年 高齢社会白書』によると、高齢者が働く理由は「健康」や「生きがい」、「社会参加」といったポジティブな理由だけでなく、「収入のため」という経済的事由が55.1%と半数を超えています。

 

「働かないと暮らしていけない」――厚生労働省『2023年 国民生活基礎調査』でも、高齢者世帯の55.8%が生活苦を訴えています。

 

その元凶になっているのが、まず昨今の記録的な物価高騰です。 消費者物価指数(CPI)の上昇は、特に食料や光熱費など、所得に占める生活必需品の割合が高い高齢者世帯に深刻なダメージを与えています。

 

そして物価高は日常品だけに留まりません。 アットホーム株式会社『全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2025年11月)』によると、マンションの平均募集家賃(賃料+管理費・共益費等)は、首都圏のほか全9エリアで前年同月比を上回りました。 たとえば東京23区・シングル向きの30平米以下であれば前年比11.0%増となっています。

 

さらに追い打ちをかけるのが、親の介護費用です。 長寿化により、いわゆる「5080問題」が「6090問題」へと移行し、子の負担は増大。 親が亡くなったあとの子どもの生活は、より不安定なものになっています。

 

佐藤さんが口にした「死ぬまで働かないといけない」という言葉は、決して他人ごとではないのです。 平均寿命が延びるなか、社会保障制度と物価の不均衡をどう解消していくのか――。 これこそが今、喫緊の課題となっています。