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70歳夫を絶望させた、妻のあまりに切実な本音
「青天の霹靂とは、まさにこのことでした。他の人と同じように、穏やかな老後が当たり前に続くものだと思っていましたから」
大手メーカーで働いていた佐藤健二さん(70歳・仮名)。定年退職後に65歳まで再雇用され、現在は月々約17万円の年金を受け取っています。一方、5歳下の妻・由美子さん(65歳・仮名)は、自身の年金受給が始まったばかりでした。
事件が起きたのは、由美子さんの65歳の誕生日を祝った数日後のこと。食卓に置かれたのは、記入済みの「離婚届」と、共有財産3,000万円の半分である「1,500万円」の分与を求める書面でした。パニックになる佐藤さんに対し、由美子さんは決然とした口調で理由を語り始めました。
「由美子が口にしたのは、10年前に他界した私の母のことでした。母とは折り合いが悪かったのは知っていましたが、まさかこれほどまでの恨みが残っているとは思いもしませんでした」
――お義母さんが亡くなれば、自由になれると思っていました。でも私は今も佐藤家の嫁であり、死んだらお義母さんと同じお墓に入ることになる。それだけはどうしても耐えられない。
「彼女は『こんな理由で、と思うかもしれない。でも私にとっては切実な問題』『あなたは悪くない。でも自由になりたい』と繰り返すばかりで。私も必死に食い下がりましたよ。何も、こんな年になって離婚を選ばなくても、と。しかし、彼女の意思は本当に固かったですね」
佐藤さんは別れ話を通して、由美子さんが母の介護や親戚付き合いでどれほど心を削っていたかを思い知らされたといいます。これ以上話し合っても無理だと最終的には折れて、離婚届に判を押しました。
「彼女の希望通り、預貯金は半分に分割しました。自分1人しかいませんから、残り1,500万円あれば十分。というより、何に使えばいいんでしょうか。何も思い浮かばない。きっと、このお金は1円も使わずに人生を終える、そう考えると虚しくて虚しくて……」
ガランとした一軒家で、佐藤さんは今、終わりの見えない孤独と向き合っています。