2025年、金利上昇が現実味を帯びるなか、メディアやSNSでは「固定金利への借り換え」を推奨する声が目立つようになりました。周囲の動向に焦りを感じ、「自分も早く動かなければ」と不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。しかし、場の空気や漠然とした恐怖心だけで決断を下すのは早計。その「安心」を求めた行動が、かえって家計に大きな損失をもたらす可能性もあるのです。ある男性のケースをみていきましょう。
 「みんな借り換えてるから」と焦った年収1,100万円・45歳会社員、2025年「住宅ローン」の判断ミスで「1,200万円」を失った致命的な誤算 (※写真はイメージです/PIXTA)

2025年、借り換えで「カモ」にされないための防衛策

近年の住宅ローン市場では、金利環境の変化が利用者の心理に大きな影響を与えています。

 

たとえば、株式会社LIFULL/LIFULL HOME’Sが実施した『住宅ローンに関する意識調査(2025年7月)』によると、現在組んでいる、あるいは検討している住宅ローンの金利タイプについて、変動金利を選択している割合は依然として最多でした。購入者で約64.1%、購入検討者でも56.0%と、いずれも過半数を占めています。

 

一方で注目すべきは、その比率が前回調査から低下している点。数字が示しているのは、「変動金利が合理的だと理解していても、心理的な不安は確実に広がっている」という現実です。

 

そして、人が不安を強く感じたとき、判断基準は「合理性」から「安心感」へと一気に傾きます。佐藤さんのケースでは、その“安心”がいくらで売られているのかを確認しないまま、契約書にサインしてしまったことが問題でした。

 

忘れてはならないのは、固定金利とは“保険商品”と同じようなものという事実です。将来金利が上がるリスクを銀行が引き受ける代わりに、そのコストをあらかじめ上乗せした金利が設定されています。つまり、固定金利を選ぶという行為は、「最悪の未来が起きた場合の損失」を「今この瞬間に、確実なコストとして支払う」という選択です。

 

一方で、誤解してはいけないのは、固定金利そのものが間違いだという話ではありません。収入が不安定な人、返済余力がほとんどない人、あるいは金利変動による精神的ストレスに耐えられない人にとって、固定金利は合理的な選択になり得ます。

 

問題は、「自分がどのタイプなのか」を見極めないまま、「みんながやっているから」「怖くなったから」という理由だけで動いてしまうことです。恐怖による思考停止こそが、最大のリスクなのです。

 

大切なのは、金利が何%になった場合、月々の返済はいくら増え、家計にどの程度の影響が出るのか、具体的な数字を把握できているか。数値で見えて、初めて冷静な判断が可能になるのです。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL/LIFULL HOME’S『住宅ローンに関する意識調査(2025年7月)』

 

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