葬儀は、本来、故人を静かに見送り、その生涯を偲ぶ厳粛な儀式。しかし、参列者や親族が感情的になり、その場が思わぬ修羅場と化してしまうケースも珍しくありません。生前の確執、相続問題、あるいは介護の負担を巡る認識のズレなどが引き金となることも。故人が亡くなったことで抑えられていた不満や誤解が一気に表面化し、故人を悼むはずの場で激しい口論や非難の応酬が始まってしまうのです。
 「19万8000円で家族葬」のはずが…急逝した82歳・父を見送った月収45万円・55歳長男、会計時に震えが止まらなかった「予想外の請求額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

葬儀トラブルの多くは「料金・サービス」の説明不足

斎藤さんのようなケースは、決して珍しいことではありません。独立行政法人国民生活センターに寄せられる葬儀サービスに関する相談件数は、年間数百件単位で推移しており、その多くが「高額な追加料金を請求された」「説明とサービス内容が違う」といった契約・解約に関するトラブルです。実際、葬儀に関連するトラブルは、2024年度978件と、過去最高を更新しています。

 

また、株式会社鎌倉新書が公表した『第6回お葬式に関する全国調査(2024年)』によると、お葬式の平均費用は約118.5万円(飲食・返礼品含む)となっています。近年は「家族葬」や「直葬」といった小規模な形式が増え、費用は減少傾向にあるといわれていますが、それでもインターネット広告でよく見かける「数万円〜」という金額だけで完結するケースは極めて稀です。

 

広告に表示されている「プラン価格」は、あくまで車両代や棺などの「物品代」が中心であり、火葬料金や式場使用料、宗教者へのお布施などが別途必要になるケースがほとんどだからです。

 

いざという時に慌てないためには、本人が元気なうちに複数の葬儀社から事前見積もりを取り、総額でいくらかかるのか、「含まれていない費用」は何なのかを確認しておくことが重要です。

 

[参考資料]

独立行政法人国民生活センター『墓・葬儀サービス』

株式会社鎌倉新書『第6回お葬式に関する全国調査(2024年)』