久しぶりに実家に帰省した際、親の姿を見て「老い」を感じ、胸が締め付けられる瞬間があるのではないでしょうか。年老いていく親と、それを受け入れることのできない子ども。そこには意識の大きな隔たりがあります。ある男性のケースをみていきます。
「手術代なんてドブに捨てるようなものよ…」82歳母が「浮いたからあげる」と押し付けた“帯封つき100万円”に55歳息子、絶句。悲しみと情けなさで涙したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

迷惑をかけたくない親、長生きしてほしい子ども

厚生労働省『令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する 意識調査』によると、自身の人生の最終段階における医療・ケアについて、68.6%が「話し合ったことがない」と回答。その理由として最も多かったのは「話し合うきっかけがなかったから」(62.8%)でした。また「話し合うきっかけがあるとしたらいつか」の問いで最も多かったのが「家族等の病気」で54.8%。次いで「自身の病気」で47.7%でした。

 

さらに「どこで最期を迎えたいか考える際に、重要だと思うこと」として、最も多い声が「家族等の負担にならないこと」(71.6%)。良子さんの極端ともいえる行動。しかしその背景には、最後を前に多くの人が抱く共通の感情がありました。

 

【どこで最期を迎えたいか考える際に、重要だと思うこと】

家族等の負担にならないこと…71.6%

体や心の苦痛なく過ごせること…60.2%

経済的な負担が少ないこと…55.9%

自分らしくいられること…48.7%

家族等との十分な時間を過ごせること…43.4%

信頼できる医師、看護師、介護職員などにみてもらうこと…42.0%

人間としての尊厳を保てること…36.1%

自分の住み慣れた場所にいること…35.7%

 

親は家族に迷惑をかけることに対して、極端にネガティブになっています。経済的にも、子どもたちの負担にはなりたくないと考えているもの。一方で、残されるであろう子どもからしたら、お金が多少かかろうと1日でも元気で長生きしてもらいたいと願うものです。人生の終わりを前に、親子の間には大きな意識のギャップが生まれます。

 

ただそのギャップをそのままにしておくと、そのときを迎えたときに大きな後悔になるもの。盆や正月は、親が抱いている「老後の生き方」「最期の迎え方」について、膝を突き合わせて話し合うよい機会です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する 意識調査』