街は華やぐ季節となりましたが、2025年のクリスマス商戦は「過去最大の冷え込み」という衝撃的な局面に直面しています。市場規模はわずか2年で3分の2にまで縮小し、「予定なし」との回答は過半数を超えました。しかし、この減速を単なる「物価高による買い控え」と片付けるのは早計です。データから見えてきたのは、日本人の消費価値観における構造的な変化でした。かつての国民的行事が直面している「イベント離れ」の実態と、加速する「選別消費」の現在地について解説します。
「市場規模が2年で3分の2」の衝撃。「クリスマス商戦」が過去最大の“冷え込み”となった数字の裏側 (※写真はイメージです/PIXTA)

「イベント離れ」は不可逆的な流れか

12月に入り、街なかがイルミネーションで彩られる季節となりましたが、2025年のクリスマス商戦はかつてないほどの「冷え込み」を見せているようです。

 

株式会社インテージが12月12日に公表した調査結果は、流通・小売業界にとって衝撃的な数字を含んでいました。今年のクリスマスに「予定なし」と回答した人は54.1%に達し、過去最高水準を更新したのです。市場規模の試算値は7,274億円。これは前年比で約94%の水準ですが、2年前の2023年と比較すると、実に3分の2にまで縮小してしまった計算になります。

 

かつては年末最大の消費イベントとして君臨したクリスマスに、一体何が起きているのでしょうか。データからは、物価高による「生活防衛」だけでは説明しきれない、日本人の消費価値観の構造的な変化が浮かび上がってきました。

 

まず注目すべきは、予算の推移です。調査によると、今年の平均予算は1万6418円でした。昨年、大幅な減少を記録した水準から横ばいとなっており、回復の兆しは見られません。2023年には2万2,000円台だったことを踏まえると、わずか2年で消費者の財布の紐は極端に固くなりました。

 

ここ数年続く物価高騰の影響は無視できません。実質賃金が伸び悩むなかで、生活必需品の価格は上がり続けています。調査レポートでも指摘されている通り、エネルギーコストの上昇なども相まって、消費者の間には「生活防衛意識」が完全に定着しました。かつてなら「せっかくのクリスマスだから」と許容されていた非日常への支出(非必需支出)が、シビアな見直しの対象となっているのです。

 

しかし、今回の調査結果でより深刻なのは、単にお金がないから消費しない、という理由だけではない点です。

 

予定がない理由として最も多かった回答は「興味がない・習慣がない」で、31.1%を占めました。これは経済的な理由である「お金をかけたくない・節約したい」(16.2%)を大きく上回っています。つまり、多くの消費者にとって、クリスマスというイベントそのものが、時間や労力を割くべき対象ではなくなりつつあるのです。

 

これには、コロナ禍を経て変化したライフスタイルが影響していると考えられます。パンデミック後の外出需要が一巡し、人々は「義務的なイベント」よりも「日常の安定」や「自分の本当に好きなこと」に重きを置くようになりました。世間が盛り上がっているから自分も参加する、という同調圧力型の消費行動は、もはや過去のものとなりつつあるのかもしれません。