(※写真はイメージです/PIXTA)
「平日クリスマス」が消費に与えるブレーキ
2025年のカレンダー配列も、消費の縮小に拍車をかけました。今年のクリスマスイブ(24日)は水曜日、クリスマス(25日)は木曜日です。週のど真ん中である平日開催は、消費行動に物理的な制約を与えます。
仕事や学校がある平日の夜に、大掛かりなパーティーや外食、遠出を伴うデートを計画するのは困難です。調査結果を見ても、食関連の消費は24日と25日に集中しており、週末への分散や前倒し消費は限定的であることが示唆されています。
週末であれば期待できた宿泊旅行や高単価なディナー需要が減り、代わりに「自宅でささやかに過ごす」というスタイルが主流にならざるを得ません。実際に「自宅でパーティー」をするという回答も前年より減少しており、平日の仕事終わりに手間のかかる準備をする余裕がない現代人の姿が透けて見えます。
一方で、すべての消費が死滅したわけではありません。縮小する市場のなかで、興味深い動きを見せているのが「クリスマスケーキ」です。
イベント全体の行動が縮小傾向にあるなかでも、「ケーキを食べる」と回答した人は40.6%と、前年からほぼ横ばいを維持しています。購入予算のボリュームゾーンは3,000円台から4,000円台の中価格帯です。
ここから読み取れるのは、「派手なことはできない(あるいはしたくない)が、クリスマスの気分だけは味わいたい」という消費者心理です。プレゼント交換や豪華なディナーは省略しても、ケーキひとつあれば食卓に季節感を持ち込むことができます。いわば、クリスマスというイベントに参加するための「最小単位のチケット」として、ケーキが機能しているといえるでしょう。
高価格帯(5,000円以上)のケーキ需要も1割強の層で維持されており、ここには「一点豪華主義」のような消費行動も見て取れます。全体を節約しつつも、特定のアイテムにはこだわりを持つ。そんなメリハリのある消費が、現在のトレンドなのかもしれません。
「若者のイベント」という幻想の崩壊
今回のデータで特に印象的なのは、高校生以下の子どもを持つ世帯においてさえ、経済的負担回避の意識が強いという点です。
かつてクリスマスは、子どもがいる家庭や若いカップルが主導するイベントでした。しかし、子育て世帯において「お金をかけたくない」という理由が全体平均より高いという事実は、現役世代の経済的な余裕のなさを如実に表しています。
また、若年層を含む全世代で「予定なし」が過半数を超えたことは、クリスマスが国民的な行事としての地位を失いつつあることを示唆しています。SNSなどで他者のきらびやかな生活が可視化される現代において、自身の経済状況とのギャップに疲れを感じ、あえて「何もしない」ことを選択する層が増えているという見方もできるでしょう。
今回の調査結果は、日本の消費社会におけるひとつの転換点を映し出しています。右肩上がりの経済成長を背景に、全員が同じ方向を向いて消費を楽しんだ時代は完全に終わりを告げました。
市場規模7,274億円という数字は決して小さなものではありませんが、その中身は変質しています。義務感や同調圧力から解放され、本当に必要なものだけを選び取る「選別消費」が加速しているのです。
[参考資料]