親が子につく嘘には、墓場まで持っていくべきものと、いつか話さなければならないものがあります。明日、娘が嫁に行く。そのタイミングで、母親がどうしても伝えておかなければならなかったこととは? ――それは、娘が信じてきた家族の歴史を根底から覆す、あまりに重い告白でした。※事例は、FPの川淵ゆかり氏のもとへ寄せられた過去の相続相談をプライバシーのため一部脚色して記事化したものです。
ずっと何かがおかしいと思ってました…明日結婚する28歳女性、母から明かされた30年前の「我が家の秘密」。式翌日、父が「遺言」を作りに走ったワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

母親が心配する「将来の問題」

母親が心配していたのは相続の問題でした。父親に認知された子どもがいて、父親が亡くなった場合、その子どもには現在の配偶者の子ども(Aさん)と同じ割合の相続権が認められます。認知された子どもは「法定相続人」となり、遺産分割協議に参加する権利があるのです。

 

認知と相続権

認知とは、法律上の婚姻関係にない男女のあいだに生まれた子(非嫡出子)に法律上の親子関係を認めることです。
認知された子は、父親とのあいだに法律上の親子関係が生じ、相続人としての権利を持ちます。以前は非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2とされていましたが、2013年9月4日の最高裁判所の決定により、この規定は憲法違反との判断で撤廃され、現在では同等となっています。

 

Aさんの母親はいいます。

 

「私はあなたが可愛いし、結婚するときは相続のことなんか考えもしなかったんだけれど。お父さんはね、もちろんあなたも可愛いんだけれど、あちらの息子さんも寂しい思いをさせた分、やっぱり同じことをしてあげたいみたいなのよ」

 

Aさんは困惑しました。

 

「そんなの法律で決まってるんなら私は何もいえないわよ。まだまだ先の話だし。でも、もしそうなったとき、私はどうしたらいいんだろう」

もし、父親が亡くなったら?

相続人が複数いる場合、認知された子も含めて全員で「遺産分割協議」を行う必要があります。

 

認知された子の存在は、被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本を確認することで判明します。認知届が受理されると事実は戸籍に記録されるため、家族に内緒にしていても相続の際には隠し通せるものではありません。

 

もし、遺産分割協議後に認知された子がいることが判明した場合は、その子は遺産分割のやり直しを求めることはできませんが、自身の相続分に相当する額の支払いを請求することができます。認知された子の存在があとから判明すると、遺産分割の見直しや再分割が必要となり、トラブルに発展することもあります。トラブルを避けるためには、生前に専門家に相談したり、遺言書を作成したりするなどの対策が有効です。