(※写真はイメージです/PIXTA)
家を手に入れた母親、賃貸へ追われた父親
「お父さんはどこにいったの?」と聞くAさんに、母親は「会社の近くの1Kの賃貸マンションに引っ越したわよ。通勤が楽になって喜んでるんじゃない?」と答えます。
Aさんは、どちらかというと亭主関白な父親が出ていったことが信じられませんでした。しかし母親は続けます。
「だって、私が出ていったらあなたは私に子どもを預けることもできなくなるじゃない。それにお父さんはこの家を私にくれるっていうのよ」
Aさんは、両親になにが起きたのか、とても不思議に思いました。
夫婦間で家を譲る?「贈与税の配偶者控除」とは
たとえ夫婦間であっても、基礎控除の110万円を超える贈与には贈与税が発生します。ですが、住まいに関する夫婦間の贈与には特例があります。
「贈与税の配偶者控除」と呼ばれるもので、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与した場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。
贈与税の配偶者控除を受けるためには、下記の要件を満たす必要があります。
・夫婦の婚姻期間が20年以上であること
・贈与された財産が、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること
・贈与を受けた人が、贈与された居住用不動産に実際に住み、その後も住み続ける見込みであること
・同じ配偶者間では一生に一度しか適用を受けられない
この特例を適用するためには、申告手続きが必要です。贈与を受けた年の翌年3月15日までに、必要書類を添えて税務署に贈与税の申告書を提出する必要があります。贈与税が0円となっても申告は必須ですから注意してください。申告に必要な書類としては次のものがあります。
・戸籍謄本または抄本(贈与を受けた日から10日経過後に作成されたもの)
・戸籍の附票の写し(贈与を受けた日から10日経過後に作成されたもの)
・贈与を受けた居住用不動産の登記事項証明書
・居住用不動産を評価するための書類(固定資産税評価証明書など)
なお、贈与税は非課税になったとしても、不動産取得税や登録免許税は発生しますので注意しましょう。また、毎年の固定資産税も発生することになります。
Aさんの母親のケースでは、不動産の評価額が2,110万円(控除枠合計)には収まりませんでしたが、母親には過去に自分の親から相続した資産があったため、納税資金に問題はありませんでした。これから贈与を検討する人は、税金のシミュレーションを事前に行ったほうがいいでしょう。