2025年は企業間の格差がいっそう広がったように思われる――。そう語るのは、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)の先駆者である東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長・福留拓人氏です。黒字をあげた企業はこれまで目を向けてこなかったタイプの優秀な人材に投資するなど、新たな採用トレンドが生まれつつあるといいます。今回は最新の「優秀な人材」の定義とスカウトの現状を解説します。
求められるのは“経験豊富なベテラン”よりも“若手のスタープレーヤー”…広がる「企業間の格差」と人材採用の新たなトレンド【キャリアのプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

若手の“スタープレーヤー”獲得へ…採用文化の常識に変化

日本企業の採用は長らく「優秀だが組織文化を乱さず、自社のカルチャーに染まってくれる人材」を求める傾向が強くありました。異物は受け入れず、器を壊さない範囲で波を立ててもらう――そんな “制限つきの革新” とそれに沿った採用が一般的だったといえます。

 

以前のコラムにも書いたように、いま注目されているのは「若手なのに高い市場価値を持つ人材」への積極投資です。先ほどのスポーツに置き替えると「金は出すが、ピークより前に成果を得よう」という発想でしょうか。経験豊富なベテランではなく、伸びしろの大きい若手スター候補に、相応の報酬とポジションを提示して迎え入れるケースが増えており、人材のスカウト依頼も増えています。

 

こうした若いハイパフォーマーは数が限られています。意外かもしれませんが、希少であるからこそ、探索や接触自体は意外とスムーズに進むのも特徴です。受け入れ側の役割設計や待遇面を整えておけば、大きな波乱なく迎えられる場合も多いのです。

 

日本企業は長らく「他社で同じ事例があるか」を参考に進めてきました。過去にも研究はされていましたが、実際に彼らを活躍させるのは難しいと判断され、積極採用には至りませんでした。しかし今は状況が変わっています。成長を続ける企業は、こうした希少人材を活用し、良い意味で“破壊的な実績”が獲得できないか、組織の革新に挑む段階へと進み始めています。

 

企業間格差が広がる中、好循環にある企業は次の成長の柱として、若いスター人材の登用に踏み出しています。これは一過性のトレンドなのか、それとも新たな採用文化として定着するのか。2026年に向けて注目すべき流れが続きそうです。

 

自社の器を越えるほどの成長ステージにあっても、若手の“スタープレーヤー”にイノベーションを託す――そんな“未来への投資”を掲げる企業が確実に増えています。これらの取り組みがどのような成果を生むのか、今後の動向を注視したいところです。

 

 

福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長