2025年は企業間の格差がいっそう広がったように思われる――。そう語るのは、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)の先駆者である東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長・福留拓人氏です。黒字をあげた企業はこれまで目を向けてこなかったタイプの優秀な人材に投資するなど、新たな採用トレンドが生まれつつあるといいます。今回は最新の「優秀な人材」の定義とスカウトの現状を解説します。
求められるのは“経験豊富なベテラン”よりも“若手のスタープレーヤー”…広がる「企業間の格差」と人材採用の新たなトレンド【キャリアのプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

2025年に鮮明になった「企業間の格差」

株式市場で日経平均が最高値を更新した2025年も、晩秋を迎えました。しかし、日常生活において株高の恩恵を感じている人はごくわずかだと思います。その一方で、なかには信じられないような業績を挙げている会社もあり、「本当に羽振りが良い」と感嘆します。

 

業績が成長曲線を描く企業を見ると羨ましい限りですが、企業間の格差はこれまで以上に広がっているように思われます。税の専門家に伺ったところによると、2025年は中小企業で法人税を納付した企業、つまり黒字企業は減少傾向とのことでした。

 

一般庶民と富裕層の格差が広がったのと同様に、企業の間でも「勝つ企業」と「そうでない企業」の格差が加速しているのだろうと感じています。

 

成長を続ける企業の採用現場を見ると、これまでの常識が少しずつ崩れ始めています。かつては “高嶺の花” とされていたような人材――いわば業界のスタープレイヤー――に対してもアプローチをかける企業が増えてきました。プロスポーツで例えるなら、FA選手の獲得に本格的に名乗りを上げるような動きです。

 

これは、そんな価値観のなかった企業が、大枚をはたいて名選手の獲得に動いたり、メジャーリーガー級のスター選手を採算度外視で連れてきたりするようなものです。上場企業では株価上昇によって資産が膨らみ、投資余力が増したことも大きいでしょう。それにより、採用面で新しいチャレンジが可能になっているのではないでしょうか。