令和5年度の文部科学省の調査によると、小中学校における不登校の児童生徒数は、過去最多の34万6482人を記録しました。増加する数字の裏には、単なる「怠け」や「甘え」では片付けられない、子どもたちの切実なSOSが隠されています。「あんなに良い子だったのに、なぜ?」「家でゲームばかりしているのは、ただのサボりでは?」親がそう思い込んでしまう行動の裏には、実は「過剰適応」による燃え尽きや、言葉にできない「不安」が潜んでいるかもしれません。本記事では齊藤万比古氏(児童精神科医)監修の書籍『不登校・登校しぶりの子が親に知ってほしいこと: 思春期の心のメカニズムと寄り添い方』(大和出版)より、不登校のタイプを4つに分類し、親が見落としがちな「登校しぶりの本心」を解説します。
学校には行くのに…教室に行かず、ずっと「保健室にいる子」の本音【精神科医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

type E:混合型…がんばりor我慢しすぎて突然キレる

混合型はA〜Dのうちふたつ以上の型が混在するタイプです。とくに多いのが「衝動型+過剰適応型」「衝動型+受動型」。衝動型とほかの型の混合型です。背景に発達障害が存在していることが多く、学校教育だけでは対応できません。早めに医療との連携をはかり、専門医の指導を受けることが大切です。生活リズムや感覚過敏、実行機能(段取り)、対人関係の誤解などに対して適切な医療サポートが必要です。

 

■衝動型+過剰適応型

 

イラスト:田中麻里子
イラスト:田中麻里子

 

問題なく見えるのに感情を爆発

評価を求めて背のびするが、たとえば係やリーダーに選ばれ、完璧にやろうとしているときに注意を受けるなど、周囲からマイナスの指摘を受けると、一気に感情が爆発。その後自己嫌悪におちいり、似た状況を回避。行事やテスト直前直後の遅刻・早退が増える。

 

いい子でいようとしストレスからゲーム漬け

学校では勉強や人間関係の問題をおさえ込み、帰宅後にゲームやSNS漬け。朝起きられず、午前中は欠席してしまう。

 

終わりのないがんばりストレス

ほめられると、さらに周囲の期待値が上がる不安を解消するために、衝動買いやゲーム課金などに走る。生活リズムが崩れ不登校に。

 

■衝動型+受動型

 

イラスト:田中麻里子
イラスト:田中麻里子

 

 

我慢の限界で怒りが爆発

普段からいろいろなことを我慢し、いやなことを避けているが、限界が来たときに、唐突に学校を拒否し、家に留まる。

 

わるふざけに巻き込まれ、登校をしぶる

グループの強い子の命令を断れずに、わるふざけに巻き込まれたりして、恥をかかされたりする。いやだと言えず、苦手な子がいるときは学校に行けなくなる。

 

抱え込みすぎて逃げ出す

係や発表、締め切りなどを抱え込み、直前で放り出して逃げてしまう。当日に体調不良で欠席する、白紙で書類を提出するなど。

発達障害「グレーゾーン」の可能性も考えて

「怠け・反抗」ではなく“できない”可能性があることも考えてください。

 

とくに発達障害とは診断がされないグレーゾーンの子の場合、本人は必死でがんばって学校生活を送っています。思春期になると、より複雑な人間関係のなかでトラブルが起こることもあります。注意して見守る必要があります。

 

 

齊藤 万比古

恩賜財団母子愛育会

愛育研究所顧問