思考には2つの型があります。問題が起きるたび対処する「解決思考(フォーキャスティング)」と、未来の「あるべき姿」から逆算する「コーチング思考(バックキャスティング)」です。私たちは普段、目の前の課題をこなす「解決思考」に陥りがちで、それは部下指導の現場でも変わりません。「どう解決する?」と問うばかりでは、大きな未来・具体的な目標は描けないのです。本記事では、尾澤まりこ氏の著書『1ON1に悩む管理職必須スキル コーチング思考』(ごきげんビジネス出版)より、私たちが無意識に陥る「現状維持の罠」と、未来を具体化する思考法の違いを解き明かします。
コロナ禍前のフィリピン。50階建てビルが建つ隣で、親の職業が「ゴミ拾い」の子どもに“将来の夢”を聞いたら…返ってきた「まさかの答え」 (※写真はイメージです/PIXTA)

普段、やりがちな思考

人やチームの目標達成や課題解決の考え方には2つの考え方が存在するのです。1つめは、「フォーキャスティング的考え方」で「解決思考」とも呼ばれます。2つめは、「バックキャスティング的考え方」で「コーチング思考」と呼ばれるものです。

 

私たちは普段、フォーキャスティング的考え方(解決思考)で生活していることが多いようです。これは仕事場でも変わりません。フォーキャスティング的考え方(解決思考)の出発点は「現在」です。フォーキャスティング的考え方(解決思考)では、現時点で問題が起こったら、モグラたたきのようにそこを潰していき、また問題が起こったらそこを修正していく、この繰り返しです。

 

[図表1]フォーキャスティング(積み上げ式)・解決思考

 

[図表2]バックキャスティング(逆算方式):コーチング思考

 

毎日やることが多くて忙殺されている2人のお子さんをもつお母さんの場合は、お子さんにご飯をあげる、おむつを替える、泣き止んだらあやす、お風呂に入れる、などとにかく目の前にあることをやっていくだけで1日がおわってしまうことも多いでしょう。この場合は、未来のことを考える時間もなかなか取れないので、どうしてもフォーキャスティング的考え方になりがちです。

 

時間や情報がたくさんあってもフォーキャスティング的考え方になる場合があります。私は仕事の1つとして、実際の中学や高校の授業にお邪魔し、ワークショップをやったり、学生の方々とお話しする機会も多かったりするのですが、私が学生のころより何倍もの情報があふれているのに、いい悪いはないですが、大きな目標をかかげている学生さんは少ないようです。