思考には2つの型があります。問題が起きるたび対処する「解決思考(フォーキャスティング)」と、未来の「あるべき姿」から逆算する「コーチング思考(バックキャスティング)」です。私たちは普段、目の前の課題をこなす「解決思考」に陥りがちで、それは部下指導の現場でも変わりません。「どう解決する?」と問うばかりでは、大きな未来・具体的な目標は描けないのです。本記事では、尾澤まりこ氏の著書『1ON1に悩む管理職必須スキル コーチング思考』(ごきげんビジネス出版)より、私たちが無意識に陥る「現状維持の罠」と、未来を具体化する思考法の違いを解き明かします。
コロナ禍前のフィリピン。50階建てビルが建つ隣で、親の職業が「ゴミ拾い」の子どもに“将来の夢”を聞いたら…返ってきた「まさかの答え」 (※写真はイメージです/PIXTA)

目標をより具体的にイメージできる考え方

一方、バックキャスティング的な考え方(コーチング思考)については、どうでしょうか? この思考方法の出発点は「未来」です。目標であれば、それを達成したあとの姿ですし、課題や困難であれば、それを乗り越えたあとの姿です。

 

ライザップの有名なコマーシャルを思い出してください。フォーキャスティング的考え方(解決思考)であれば、「痩せたいんです」と相談に来たお客さんに対して次のような質問をしていきます。

 

「あなた、なんでここまで太っちゃったの?」(現状把握)

「何が問題なの?」(現状把握)

「どうすれば痩せられると思う?」(解決方法)

 

これはすべて現在の問題を抱えた状況にフォーカスを絞った質問をしています。

 

一方、バックキャスティング的考え方(コーチング思考)であれば、目の前のお客さんは、目標を達成できる人、課題を解決できる人として、「達成できたあと」にフォーカスを絞った質問をしていきます。「痩せたあと、まわりの人から、どんなふうに声をかけられたい?」とか、「痩せたあと、どんな服を着たい?」などです。

 

この質問で、お客さんは達成できたあとのイメージングをし、その目標をより具体的にしていきます。目標をより具体的にはっきりイメージすることで、合理的に手段を考えていく思考方法です。

 

たとえば、「いまからミステリーツアーに行きますよ。集合時間は午後2時です」だけだと……

 

●歩いていったらいいか?

●電車に乗ったほうがいいか?

●飛行機を選んだらいいか?

 

など具体的な手段はなかなか取りにくいものです。

 

ですが、「あしたの午後3時、羽田空港のBカウンターに集合ね」といわれたら、皆さんの自宅からいちばん近いルートや手段を使って目的地に向かいますよね。どこに行くかによっては、持ち物も変わってくるかもしれません。数百メートル離れていて、約束の日時も決まっているのに、目的地に歩いて行こうとは思わないですよね。

 

現実には、沖縄に住んでいる人があしたの午後3時に羽田空港に集合といわれているにもかかわらず、目的地が明確ではないばかりに、徒歩や自転車で羽田空港に向かって出発するようなことが起きてしまっています。飛行機を使えば数時間でたどり着くところが、何日かかっても目的地にまだたどり着かないことがありえるのです。