(※写真はイメージです/PIXTA)
三者三様、イマドキ若者の入浴観
「『風呂キャンセル』って言葉、すごくわかります。私、週に2、3回はシャワーも浴びずに寝てしまうこともありますね」
そう話すのは、IT企業に勤める田中 美咲さん(26歳・仮名)です。デザイン部門で働き、忙しい時期は終電近くになることも多いといいます。
「残業でクタクタになって帰ってくると、もう何もする気力がなくて……。特に女性は、お風呂って本当にやることが多いんです。メイクを落として、髪を洗って、コンディショナーして、トリートメントして、体を洗って。お風呂から出たら、今度は髪を乾かして、化粧水、美容液、乳液ってスキンケアが待ってる。全部真面目にやると、1時間近くかかってしまうんです」
疲れている夜、この長く複雑なプロセスを前にして、心が折れてしまうと田中さんは続けます。
「疲れているなか、1時間もかけてケアするより、その分、1秒でも長く寝たい。シートマスクしながら髪を乾かすとか、工夫はしているつもりですけど、根本的に工程が多い。だから、明日の朝シャワー浴びればいいかなって、ベッドに直行しちゃいますね」
そんな田中さんの話に「わからなくもない」と頷くのは、同僚の鈴木 健太さん(27歳・仮名)です。鈴木さんは週末にサウナへ行くのが趣味だといいます。
「田中さんの言う『面倒くささ』、わかります。私も家のお風呂は正直面倒で、夏場以外はシャワーで済ませることが多いです。でも、サウナはまったく別ですね」
鈴木さんにとって、自宅での入浴とサウナは、まったく異なる位置づけにあるようです。
「サウナは、『ととのう』っていう明確な目的がありますから。熱いサウナ室で汗をかいて、キンキンに冷えた水風呂に入って、外気浴でリラックスする。あのご褒美みたいなリフレッシュ感のためなら、1時間かけて施設に行くのもまったく苦じゃない。サウナの後の入浴は、むしろ最高に気持ちいいです」
鈴木さんにとって、家での入浴は「体を洗うだけの作業」である一方、サウナは「心身をリセットする体験」。だからこそ、サウナには行かなくても、家のお風呂は「キャンセル」しがちだと言います。
「家のお風呂って、ただ体を洗うだけの作業って感じがして。でもサウナにはお金と時間を使う価値があると思っています」
2人の話を聞いていた、もうひとりの同僚、佐藤 大輝さん(25歳・仮名)は、首をかしげます。佐藤さんは、サウナブームにも乗らず、入浴自体にもあまり関心がないタイプです。
「俺、正直2日くらいお風呂入らなくても平気ですね。特に冬場は汗もかかないし。髪のべたつきとか、体の汚れとかも、あんまり気にならないタイプで」
佐藤さんにとっては、サウナの良さも理解しがたいと言います。
「熱いの我慢して、冷たい水風呂入って……。家でゆっくり動画見てる方がよっぽどリラックスできます。お風呂もサウナも、優先順位はかなり低いですね」