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「肩の荷が下りました」安堵も束の間…妻が絶句した「謎の振込先」
長年勤めた製造業の会社を、60歳で定年退職した田中一郎さん(60歳・仮名)。役職定年を経ての数年間は、どこか張り合いのない日々だったといいますが、無事にこの日を迎えられたことに、一郎さん自身、そして妻の和子さん(58歳・仮名)も安堵していました。
「本当に肩の荷が下りました。これからは少しゆっくりできるなと、妻と話をしていました」
退職金として振り込まれた額は、約2,500万円。年金を受け取るまでの当面の生活資金であり、老後の生活を支える大切な資金です。和子さんは、真面目で堅実な夫のこと、ひとまず定期預金にでも預け替えるのだろうと考え、一郎さんも退職金の話が出たときに、「そうだな、少し考えないとな」と話すだけで、具体的な使い道については深く話していませんでした。
異変に気づいたのは、退職から半年ほど過ぎたあたりだといいます。和子さんが家計の確認のため、夫婦で共有しているネットバンキングの口座にログインしたときでした。普通預金にあったはずの退職金が、ごっそりと減っていたのです。
慌てて取引明細を確認すると、そこには和子さんがまったく見覚えのない「XX証券」という振込先が。しかも、一度や二度ではありません。数百万円単位の金額が、数回にわたって振り込まれているのです。合計すると、退職金の半分近くに達していました。
「あなた……これ、何? XX証券って」 リビングで新聞を読んでいた一郎さんに、和子さんは顔面蒼白になりながら、スマートフォンの画面を見せます。一郎さんは一瞬ばつが悪そうな顔をしましたが、「ああ、それか。いや、前にテレビで『貯金だけしておいても損をするだけだ』なんて言っている専門家がいただろう。これからは資産運用も勉強しないといけないと思ってな。新NISAとか、外国株とか、少し始めてみたんだ」と説明をしたといいます。
言葉を失った様子の和子さん。「あなた、嘘でしょ? なんでひと言も相談なしに、そんな大事なことひとりで決めるのよ……」。 特にお金のかかる趣味もなく、大きな買い物や賭け事とは無縁の一郎さん。そんな夫が、何の相談もなく、リスクがつきものの投資に大金をつぎ込んでいた……和子さんは、夫の思いもよらない大胆な行動に、まさに目が点になる思いだったといいます。