物価高騰が続くなか、経済的な合理性から「実家暮らし」を選ぶ働く女性が増えています。調査によれば、実家暮らしの人は生活満足度が高いという結果も。しかし、その選択が長期的な資産形成や結婚観において、思わぬ「罠」となっている可能性が指摘されています。
〈手取り20万円〉32歳・実家暮らし女性の告白。「海外旅行に行ける」「好きな服を買える」でも、婚活で直面した「痛い現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

家賃8万円を払うより合理的だが…

都内で事務職として働く木村 亜希子さん(32歳・仮名)。現在、両親と3人で神奈川県にある実家で暮らしています。

 

「新卒で入社して10年目になりますが、昇給は微々たるもの。手取りは月20万円ほどです。いずれ給与があがれば実家を出て1人暮らしをするつもりでしたが、都内で部屋を借りれば家賃と共益費で安くても7万〜8万円。手取りの多くが消えてしまいます」

 

経済的な理由から実家暮らしを続ける木村さん。その選択は、日々の生活に大きな余裕をもたらしていると語ります。

 

「実家には生活費として月3万円を入れています。家賃、光熱費、食費を考えれば、破格の金額であることは自覚しています。正直、この生活に慣れてしまうと、わざわざ高いお金を払ってひとりで暮らすメリットが見いだせなくなりました」

 

家事の分担についても尋ねました。

 

「平日は仕事から帰ると母が夕食を用意してくれていますし、朝も時間があるときは昼のお弁当を持たせてくれることもあります。私は週末にリビングや水回りの掃除を手伝う程度。家事の負担はかなり少ないと思います」

 

浮いた生活費は、趣味や美容、そして貯蓄に回しているといいます。

 

「年に1〜2回は友人と海外旅行に行けますし、美容院や新しい洋服も我慢せずに買えます。日々の生活に対する満足度は、正直かなり高いと思います。もしひとり暮らしをしていたら、すべてを切り詰めて、ただ生活のためだけに働くような感覚になっていたかもしれません」

 

経済的な余裕と精神的な安定。実家暮らしのメリットを享受してきた木村さんですが、30歳を過ぎたあたりから、少しずつ焦りを感じる場面も出てきたといいます。

 

「ひとつは貯蓄です。生活に余裕があるぶん、趣味や旅行に使いすぎてしまった自覚はあります。現在の貯金額は200万円ほど。最近、転職や将来のことを考えて、同世代の友人と貯金の話になったのですが、私と同じくらいの収入でひとり暮らしを続けてきた友人のほうが、よほど計画的に貯蓄や投資をしていて、資産額で負けていたのには驚きました」

 

そして、もうひとつが「結婚」です。最近、マッチングアプリなどを利用して婚活を始めた木村さんは、自身の「実家暮らし」というプロフィールが、想像以上に相手の反応に影響することを知ったといいます。

 

「お会いした男性から『ずっとご実家なんですか?』と聞かれることが何度かありました。悪気はないのかもしれませんが、どこか家事能力や金銭的な自立心を疑われているような、試されているような。もちろん、家事全般ができないわけではありませんが、ひとり暮らしの人と比べると、生活力には不安があります」