核家族化や共働き世帯の増加、そして高騰する不動産価格などを背景に、「二世帯住宅」が再び注目されています。かつての完全分離型ではなく、LDKなどを共有しつつプライバシーも確保する、緩やかな同居スタイルが人気のようです。昭和の時代とは異なり、親世帯と子世帯が対等な立場で、互いのメリットを享受し合おうという意識が強まっているようです。しかし、その理想とは裏腹に、二世帯同居が家族関係を修復不可能なまでに破壊してしまうケースも少なくありません。
残ったのはデカすぎる“因縁の家”…「マイホームの援助」「子育ての協力」に飛びついた、世帯年収1,020万円・40代共働き夫婦の愚行。二世帯同居破綻の発端は〈義父の定年退職〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

親子関係の悪化による失敗

二世帯同居の失敗例は後を絶ちません。その根本原因の多くは、やはり「親子関係の悪化」にあります。

 

価値観の押し付け

「ヨメ」「ムコ」といった古い言葉が使われる家庭など、家父長的な価値観が残っている場合、子世帯は対等な関係を築けず、ストレスを溜め込みがちです。

 

プライバシーへの無配慮

よかれと思って子世帯の領域に過剰に干渉する(洗濯物を取り込む、勝手に掃除するなど)ことも、関係悪化の大きな原因となります。「別世帯である」という意識が欠けていると、うまくいきません。

 

親の加齢による変化

事例のように、定年退職などを機に親の性格や言動が大きく変わってしまうケースもあります。社会的役割を失ったことによる孤立感や、認知機能の低下が、同居する子世帯への過剰な干渉や攻撃性として現れることがあるのです。

 

二世帯住宅は、互いの尊厳を守り、適切な距離感を保つ意識がなければ、高確率で関係は破綻します。

ライフプランにも深刻な爪痕を残す二世帯住宅の失敗

そして、二世帯住宅の失敗は、単なる人間関係の問題では終わりません。多くの場合、「ライフプランの危機」に直結します。

 

住宅ローン

関係が悪化しても、ローンが残っているため、簡単に家を出ることができません。夫婦でペアローンを組んでいる場合、破綻時の清算が困難になります。

 

親の資金援助

親からの資金援助を受けて建てた場合、関係が悪化すると、その返済などを巡ってさらに揉める可能性があります。

 

家の維持費・売却問題

子世帯が出ていったあと、残された大きな家の維持費を親世帯だけで負担するのは困難です。また、特殊な間取りの二世帯住宅は、一般的に売却も難しいとされています。

 

親子関係の悪化により、経済的に追い詰められ、離婚に至るケースも少なくありません。二世帯住宅の購入は、「絶対に失敗できない」極めてリスクの高い選択なのです。だからこそ、よほどの事情がない限り、安易な二世帯住宅の購入は推奨しにくいのが現状です。検討する場合は、あらゆるリスクを想定し、親子間で徹底的に話し合い、万が一の場合の対策(資金計画、離脱ルールなど)も決めておく必要があります。