(※写真はイメージです/PIXTA)
月5万円、30年間続けた「親孝行」という名の仕送り
「月5万円の仕送りを続けるのは、結構大変なんですよ」
そう語るのは、都内の企業で働く田中美咲さん(53歳・仮名)。20年前に結婚し、現在は夫と2人の子どもの4人家族です。大学卒業し、就職して実家を出て以来、30年間、毎月欠かさず実家の母・雅恵さん(78歳・仮名)に月5万円の仕送りを続けてきました。
「父が早くに亡くなり、母は女手ひとつで私と弟を育てるために、パートを掛け持ちして働いていました。少しでも恩返しができたらと、仕送りを続けてきたんです。新卒のころは、本当に苦しかった。奨学金の返済もあったし。でも母はもっと苦労したはずと、仕送りだけは辞めようとは思いませんでした」
夫婦共働きの今でも仕送りを続けるのは簡単ではありません。2人の子どもは大学生。教育費はピークに達します。それでもパートとして働いてきた母の年金は、そんなにないはず。助けられるのは自分しかいない――そう思って仕送りを続けています。
一方で、7つ年の離れた弟、直紀さん(46歳・仮名)には思うところがあるといいます。
「いつまでも定職に就かず、フラフラしています。自称フリーランスの物書きだといっています。世界中を放浪して何か書いているらしいんですけど、母を想えば、きちんと根を下ろして働いて、親孝行してほしいものです」
そんな家族の関係が崩れたのは、実家に帰省したとき。そこには、直紀さんもいました。久々、家族3人の団らんでしたが、直紀さんの何気ないひと言で一変します。
「母さん、いつも仕送りありがとうね。収入に波があるから、本当に助かる」
子どもから親への日ごろの感謝の言葉でしたが、やはり美咲さんは引っかかりました。
「……仕送りって、どういうこと?」
直紀さんへの仕送りは、20年近く続けられていたことが判明。金額は月3万~5万円、多いときは10万円とまちまちだったようですが、絶対に美咲さんには内密に……というのが取り決め。ポロっと口が滑ってしまい、事が発覚してしまったわけです。
「これまでどんな思いで仕送りを続けてきたのか、そう思うと、悔しくて悔しくて、思わず『もう縁を切る!』と言って実家を出てきました」