核家族化や共働き世帯の増加、そして高騰する不動産価格などを背景に、「二世帯住宅」が再び注目されています。かつての完全分離型ではなく、LDKなどを共有しつつプライバシーも確保する、緩やかな同居スタイルが人気のようです。昭和の時代とは異なり、親世帯と子世帯が対等な立場で、互いのメリットを享受し合おうという意識が強まっているようです。しかし、その理想とは裏腹に、二世帯同居が家族関係を修復不可能なまでに破壊してしまうケースも少なくありません。
残ったのはデカすぎる“因縁の家”…「マイホームの援助」「子育ての協力」に飛びついた、世帯年収1,020万円・40代共働き夫婦の愚行。二世帯同居破綻の発端は〈義父の定年退職〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

義父母との二世帯同居を決意した理由

マサトさん(仮名/40歳)と妻のカンナさん(仮名/41歳)は、地方で中学校の教員として働く共働き夫婦。世帯年収は1,020万円(夫500万円、妻520万円)と安定していますが、その生活は多忙を極めます。朝早く家を出て、帰宅は夜遅く。部活動などで土日出勤も珍しくありません。

 

一人娘のサクラさん(仮名/13歳)が幼いころは、近所に住むカンナさんの母が送り迎えなどを手伝ってくれていましたが、3年前に他界。父はカンナさんが高校生のころに亡くなっており、頼れる人がいなくなってしまったのです。困っていた矢先、夫のマサトさんから二世帯住宅の提案がありました。

 

夫の実家を建て替え、マサトさんの両親と同居するという話です。サクラさんの学区は変わらず、義母が中学生になった娘の帰りを出迎えてくれます。さらに、義父が建築費の一部として1,000万円を援助してくれるというのです。カンナさんは「義父母との同居は気を遣うだろうから」と懸念もありましたが、自身が奨学金の返済に苦しんだ過去もあり、娘の大学進学費用を考えると、なにより金銭的援助は非常に有難いです。背に腹は代えられないと、思い切って同居の話に飛びつきます。

 

幸先よく二世帯生活がスタート

二世帯住宅の総工費は解体費を含め4,500万円。義父からの援助1,000万円を除いた3,500万円を、マサトさんとカンナさんでペアローンを組みました。170坪の敷地に階はわかれていますが、リビングとキッチンは共有し、食事は1階で一緒にとるスタイルを選びました。

 

同居当初、義父母は協力的でした。義母が家事の多くを担ってくれて、休日出勤する際は、娘を東京まで遊びに連れて行ってくれることも。カンナさんは仕事に集中できるようになりました。「女性も出世する時代だ。校長先生を目指しなさい」と義父も応援してくれます。

 

「世間で聞くような二世帯住宅のトラブルとは無縁だわ」カンナさんは、同居前、あんなに不安がっていた自分におしえてやりたいと思いました。しかし、そんな穏やかな日々は、義父が定年退職を迎えると同時に、終わりを告げたのです。