深刻な人材不足を背景に、企業の「攻めの賃上げ」が加速。最新調査では20代の年収13%増を筆頭に、30代、40代でも年収アップのチャンスが拡大していることがわかりました。給料が上がる人にはどんな特徴があるのか。年代ごとに異なる転職市場のリアルな実態をデータから解き明かします。
20代で年収13%増の「賃上げラッシュ」到来。給料が上がる人、上がらない人の「決定的な差」 (※写真はイメージです/PIXTA)

〈40代〉転職は当たり前の選択肢へ。専門性で高年収帯への道拓く

今回の調査では、40代の転職者数が2019年度上期比で約2倍に増加。40代においても転職がキャリア形成の有力な選択肢として定着し、「転職は35歳まで」という通説はもはや過去のものであることを証明しました。

 

40代の転職時の年収は、2019年度、2025年度ともに転職前より減少する傾向が続いています。しかし、その減少幅は縮小しており、平均決定年収額自体は2019年度上期比で約4%増加。また年収分布を詳しく見ると、年収800万円以上の高年収層の割合が2019年度上期の5%から10%へと倍増しています。一方で600万円未満の層は減少しており、40代の転職は専門性を武器にしたハイクラス転職へのシフトが進んでいると考えられます。

 

40代で特に決定年収が増加しているのは、IT・通信、医療系サービス、建設業界。IT・通信業界では、全社的なDX推進を主導できる経験豊富な人材や、外資系企業と競合できるハイレベルなエンジニアへの需要が年代を問わず高まっています。医療系サービス業界では、高齢化社会の進展を背景に、介護事業大手が全国展開や新規施設の開設を加速させており、施設長やケアマネジャーといった現場経験とマネジメント能力を兼ね備えた人材の採用ニーズが急増しています。建設業界では、高度経済成長期に作られたインフラの老朽化対策や、SDGs・ESGの観点からの省エネ・脱炭素化対応が喫緊の課題です。これらの課題解決には、1級建築士や施工管理技士といった高度な専門資格を持つ人材が不可欠であり、経験豊富な40代の即戦力が強く求められています。

賃上げ時代の転職市場で求められる年代ごとの戦略

今回の分析では、2019年と比較して転職者数は大幅に増え、特に若手・中堅層を中心に、転職による年収アップがより現実的なものとなりました。その背景には、深刻な人材不足を乗り越えようとする企業の賃上げという明確な事情が存在します。

 

しかし、その様相は年代ごとに異なります。 20代は、将来性を見込んだ企業の積極的な投資対象となり、年収が大きく上昇しています。 30代は、培ったスキルと経験をテコに、より高いポジションへと駆け上がるキャリアアップ型の転職で年収増を実現しています。 そして40代は、転職が一般化するなかで、高度な専門性やマネジメント経験を活かし、特定の業界課題を解決するキーパーソンとして高年収のポジションを掴む動きが活発化しています。

 

今後も労働人口の減少を背景に、企業の人材獲得競争は続くとみられます。そのような時代において、個人のスキルや経験の価値は、これまで以上に厳しく、そしてダイレクトに年収へと反映されることになるでしょう。

 

[参考資料]

パーソルキャリア株式会社『転職サービス「doda」、2025年度上期版「年代別 転職時の年収変動レポート」を発表』