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「年金は同じなのに…」手取りが減っていた理由
都内在住の佐々木正人さん(70歳・仮名)。長年勤めたメーカーを65歳で退職し、現在は公的年金を受給しながら生活しています。受給額は厚生年金と国民年金を合わせて月額約19万円。佐々木さんは、この金額であれば夫婦2人で贅沢をしなければ、安定した老後を送れると考えていました。
しかし、受給開始から数年が経過した昨年、状況に変化が生じます。きっかけは、妻の勧めで初めて本格的な確定申告を行ったことでした。佐々木さんは会社員時代から継続して少額の株式を保有しており、年間で5万円ほどの配当金を受け取っていました。これまでは特定口座での源泉徴収で済ませていましたが、還付を受けられる可能性があると考え、他の所得と合算して申告することにしたのです。
確定申告の会場で提示された計算結果を見て、佐々木さんは自身の予想と現実の差に驚きました。所得税の還付自体はわずかな金額でしたが、問題はその後に届いた通知書の内容でした。
まず、例年よりも住民税の通知額が明らかに上昇していました。佐々木さんは当初、増税か何かの間違いではないかと疑いましたが、原因は確定申告によって「合計所得金額」が増加したことにありました。配当所得を申告したことで、自治体が把握する所得の総額が押し上げられ、結果として住民税の算出根拠となる課税所得が増えてしまったのです。
さらに数ヵ月後、追い打ちをかけるように区役所から介護保険料の改定通知が届きました。通知書に記載された金額を確認した佐々木さんは、再び困惑することとなります。前年度と比較して、保険料の段階区分が1つ上がっていたのです。
納得がいかなかった佐々木さんは、詳細を確認するために区役所の窓口へ向かいました。窓口の担当者は、提出された資料を確認しながら、保険料算出の仕組みについて説明してくれました。
「年金以外の所得を確定申告されると、その分が住民税の計算に含まれます。住民税の課税状況や所得金額が変動すると、それに連動して介護保険料の段階区分も変わる場合があるのです」
担当者の説明によれば、佐々木さんのケースでは配当所得を合算したことで、介護保険料の算定基準となる所得の境界線をわずかに上回ってしまったとのことでした。佐々木さんにとって、年間の配当収入はわずか5万円程度に過ぎません。しかし、その少額の所得を申告したことが引き金となり、住民税だけでなく社会保険料の負担まで増えてしまったのです。
最終的に、住民税と介護保険料の増加分を合わせると、年間で数万円の負担増となりました。配当で得た利益や還付金よりも、増えた支出のほうが大きくなってしまった……。
佐々木さんは、「年金の支給額自体は変わっていないのに、結果として手元に残るお金が減ってしまった。正直、このような仕組みになっているとはまったく知らなかった」と肩を落とします。