深刻な人材不足を背景に、企業の「攻めの賃上げ」が加速。最新調査では20代の年収13%増を筆頭に、30代、40代でも年収アップのチャンスが拡大していることがわかりました。給料が上がる人にはどんな特徴があるのか。年代ごとに異なる転職市場のリアルな実態をデータから解き明かします。
20代で年収13%増の「賃上げラッシュ」到来。給料が上がる人、上がらない人の「決定的な差」 (※写真はイメージです/PIXTA)

〈20代〉平均年収13%増。若手を惹きつける「攻めの賃上げ」

パーソルキャリア株式会社/dodaは、2019年度上期と2025年度上期に転職エージェントサービスを利用した転職者を分析した『年代別 転職時の年収変動レポート』を発表しました。2025年度上期の転職者数は、2019年度同期比で全年代において1.6倍以上に増加。深刻な人材不足や経済活動の回復を背景に企業の採用意欲は高く、転職希望者にとって有利な「売り手市場」が続いています。このような状況下で、採用時に提示する年収を引き上げる動きも活発化しているといいます。

 

今回の調査で最も大きな変化を見せたのが20代。20代転職者の平均決定年収額は、2019年度上期と比較して13%という大幅な増加を記録しました。転職前後の年収変動は2019年度上期は横ばいでしたが、2025年度上期には平均で5%の増加に転じており、転職が明確な収入増に結びつくケースが増えています。

 

年収分布をみると、2025年度上期では年収「400万円以上~600万円未満」の層が全体の51%。さらに、400万円から800万円未満の層全体で割合が増加しており、20代の年収水準が全体的に底上げされていることがわかります。

 

調査では、特に金融、IT・通信、コンサルティング業界での年収増が顕著だと指摘。金融業界では大手企業を中心に若手の離職防止と定着を目的とした賃上げが進行しているが、これは守りの施策であると同時に、優秀な人材を惹きつける攻めの賃上げの側面も。またIT・通信業界では、企業の採用スタンスに変化が見られ、かつてのポテンシャルを重視した未経験者採用から、より専門性を備えた即戦力人材の採用へとシフトする傾向が強まり、結果としてスキルを持つ若手には、より高い年収が提示されるようになっているといいます。また、コンサルティング業界では実力主義の評価制度の導入に加え、業界全体の採用競争の激化が提示年収の引き上げに直結しているとしています。

〈30代〉ミドル層への期待。年収600万円以上の割合が倍増

組織の中核を担う30代の転職市場も、同様に好調な動きを見せています。

 

30代転職者の平均決定年収額は、2019年度上期比で9%増。注目すべきは、転職前後の年収変動が2019年度上期のマイナスから2025年度上期にはプラス(微増)に転じた点です。30代の転職がキャリアアップと年収増を両立させるものへと変化している考えられます。

 

決定年収の分布を見ると、「年収400万円以上~600万円未満」がボリュームゾーンであることに変わりはありませんが、年収600万円以上の層の割合が、2019年度上期の11%から2025年度上期には22%へと倍増。30代が培った経験やスキルを武器に、より責任の重いポジションや高度な専門職への転職を成功させていると推察されます。

 

調査では年収増が目立つ業界として、金融、IT・通信、コンサルティングに加えて物流業界を挙げています。物流業界は、いわゆる「2024年問題」、すなわちドライバーの労働時間規制強化による人材不足という深刻な課題に直面しています。この状況に対応するため、多くの企業が業務効率化を推進できるDX人材や、組織を率いる管理職候補の採用を強化。こうした比較的高年収帯のポジションでの転職決定が増えたことが、業界全体の決定年収を押し上げる一因になったと推測されます。