社会保障制度が整備された現代日本においても、老後の暮らしは決して安泰とは限りません。特に低年金での生活は、家計の逼迫や健康への影響、孤立の深まりといった深刻な課題を抱えています。老後の生活を守るための制度や支援の存在を知り、絶望を防ぐ道を探ることが求められています。
「もう死ぬしかないのか…」70歳独り身の男性、〈年金月7万円〉で光熱費も払えない残酷な現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

データが示す低年金生活の厳しさ

田中さんの月7万円という年金受給額は、日本の高齢者単身世帯の生活において、極めて厳しい水準であることを公的な統計データは示しています。

 

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額は月額5万7,700円、厚生年金(老齢厚生年金と老齢基礎年金の合計)の平均受給額は月額14万6,429円です。田中さんの受給額7万円は、平均的な厚生年金受給額の約半額であり、国民年金の平均をわずかに上回る程度です。

 

さらに、総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』によると、65歳以上の単身無職世帯の平均的な消費支出は月額15万4,601円。田中さんの年金7万円では、この平均的な支出の半分にも満たない水準です。特に家賃や光熱費といった固定費を引いたあと、食費などの変動費を極限まで削らざるを得ない「低年金で陥りがちな生活パターン」に陥っていることがわかります。

 

この厳しい生活を立て直すための「公的制度」として、まず検討すべきは「生活保護制度」です。年金を含めた収入が、国が定める最低生活費を下回る場合、生活保護の受給資格が生じます。

 

たとえば、東京都23区の場合、生活扶助基準額は7万4,220円、住宅扶助額は5万3,700円。実際の家賃のほうが低い場合は、実際の家賃の額が支給されるので、これを加味すると、田中さんの場合、月約4万円が支給される可能性があると考えられます。

 

また、田中さんのように一定の要件を満たす低年金受給者には、「年金生活者支援給付金制度」の受給資格がある可能性もあります。これらの制度は、「自助」だけでは限界があるときに国が生活を保障する「共助」の仕組みであり、一人で抱え込まず自治体の福祉窓口などに相談することが、生活苦を回避するための重要な第一歩となります。低年金生活の現実から目を背けず、早めに公的支援を求める「自助と共助」の姿勢こそが、絶望的な状況を打破する鍵となるでしょう。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』