少子高齢化や核家族化が進むなか、お墓のあり方も多様化しています。なかでも「自然に還りたい」「家族に負担をかけたくない」と願い、樹木葬を選択するケースが増えています。しかし、新しい供養の形だからこそ、トラブルが生じることも少なくありません。ある女性の事例から、後悔しない墓地選びのポイントを見ていきます。
年金月18万円・78歳父が逝去。希望通り「樹木葬」にしたが……納骨から1年後、訪ねた娘が目にした〈信じがたい光景〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

父の願いを叶えたはずだった…

神奈川県在住、会社員の松本久美子さん(52歳・仮名)。1年前、長年連れ添った母に先立たれ、1人暮らしをしていた父・松本正雄さん(78歳・仮名)が、急性心不全で亡くなりました。

 

正雄さんは生前、月額約18万円の年金を受給し、比較的ゆとりのある老後を送っていました。しかし、元気な頃から「自分が死んだら、立派なお墓はいらない。木の下で眠るような、自然な形がいい」と口にしていたといいます。

 

「家族思いの父は、墓石代やその後の管理料で私たちに負担をかけたくないという思いが強かったようです。死後、遺品整理をしていたら、地元の霊園が展開している樹木葬のパンフレットが大切に保管されていました」

 

久美子さんは父の遺志を汲み、その資料にあった「都心から車で1時間の自然豊かな樹木葬墓地」を選びました。契約したのは、1本のシンボルツリーを囲むように複数の遺骨を埋葬する共同埋葬タイプです。

 

契約料は約50万円。永代供養が付いており、以後の管理料は不要という説明に、久美子さんも「これなら安心だ」と納得して納骨を済ませました。しかし、納骨から1年が経過した一周忌の日、彼女は言葉を失うことになります。

 

「久しぶりに訪れた墓地は、パンフレットにあった瑞々しい緑の風景とは程遠いものでした。シンボルツリーの周りには膝下の高さまで雑草が生い茂っていて。さらに驚いたのは、父のプレートがある周辺に、誰のものか分からないゴミや、枯れ果ててドロドロになった供花が放置されていたことでした」

 

管理事務所へ向かうと、そこには「本日の受付は終了しました」との貼り紙があるのみ。電話をかけても繋がらず、後日ようやく連絡が取れた担当者の回答は、「自然な形での供養をコンセプトにしているので、過度な清掃は控えている」という、実質的な管理放棄とも取れる内容でした。

 

「『管理料不要』という言葉の裏には、結局『管理もしない』という意味が含まれていたのかもしれません。父をこんな寂しい場所に置いておくなんて……。安易に決めてしまった自分を責めています」と、久美子さんは肩を落とします。

増加する「樹木葬需要」の一方で後悔も

松本さんの事例のように、近年、樹木葬を選ぶ人は増加傾向にあります。

 

株式会社鎌倉新書が実施した「第15回 お墓の消費者実態調査(2024年)」によると、お墓を購入した人のうち、実に半数近い約48.5%が「樹木葬」を選択しています。2011年の調査開始以来、樹木葬は右肩上がりで成長しており、一般墓を大きく上回る最もポピュラーな供養形態となりました。

 

【購入したお墓の種類】

樹木葬……48.5%

一般墓……17.0%

納骨堂……16.1%

合祀墓・合葬墓……14.6%

その他……3.7%

 

しかし、需要の急増に対し、供給側の管理体制が追いついていないケースや、今回の事例のような「放置」に近い状態が問題視されています。樹木葬の背景には、主に以下の3つの公的・社会的要因が関係しています。

 

1.継承者問題と多死社会

厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、墓地・納骨堂の数は微増傾向にありますが、一方で「改葬(墓じまい)」の件数も年間15万件を超え(令和4年度調査)、過去最多水準となっています。地方の一般墓を維持できなくなり、都心近郊の「継承者不要」な樹木葬へシフトする流れが加速しています。

 

2.寺院・霊園の経営基盤の脆弱化

人口減少に伴い、檀家制度を維持できない寺院が増加しています。新たな収益源として、所有する山林や境内地を樹木葬として分譲するケースが増えていますが、安価な契約料のみを原資としている場合、将来的な維持管理コストを賄えなくなるリスクを孕んでいます。

 

3.「永代供養」の解釈の齟齬

消費者は「永代供養=永遠に綺麗に管理してくれる」と考えがちですが、法的には明確な清掃基準があるわけではありません。特に民間の格安樹木葬の場合、契約書に管理の範囲が明記されていないことが多く、結果として「自然に近い状態(=放置)」を正当化されるケースがあります。

 

購入時には、過去の運営実績や財務状況、そして実際に数年前に完売した区画がどのように管理されているかを、自身の目で確かめることが不可欠です。