日本の家庭において、家計の管理をどちらか一方が担っているケースは少なくありません。長年、連れ添った夫婦であっても、お互いの「財布の底」まで完全に把握しているとは限らないものです。老後資金への不安が叫ばれる昨今、多くの世帯が慎ましく年金生活を送るなか、ある日突然、長年隠されてきた「家計の真実」が明かされることがあります。今回は、結婚50年目を迎えた夫婦の事例を通じ、現代の高齢世帯における資産形成の在り方と、その背景にある経済状況について専門的な視点から紐解いていきます。
「もう黙っているのは限界でした…」年金月10万円・70歳妻、50年間言えずにいた秘密を暴露。72歳夫「嘘だと思いました」 (※写真はイメージです/PIXTA)

ただの貯金だと思っていた」…結婚50年目、妻が明かした驚愕の資産額

都内在住の田中博さん(72歳・仮名)と妻の和代さん(70歳・仮名)夫婦。結婚して半世紀、博さんは中堅メーカーで働き、現在は月17万円ほどの厚生年金を受給しています。一方、専業主婦だった和代さんの年金は月10万円ほど。

 

「現役時代は給料のほとんどが教育費と住宅ローンに消えていきました。贅沢なんて夢のまた夢。老後は二人で細々と、つつましく暮らしていくのが当たり前だと思っていました」と、博さんは当時の苦労を振り返ります。

 

そんな博さんの思い込みを覆したのが、金婚式のお祝いを終えた数日後。和代さんが「もう黙っているのも限界だと思って……」と、スマートフォンを見せてきました。アプリを立ち上げ、見せてくれたのは、5,500万円という評価額でした。

 

「最初は、何かの見間違いかと思いました。詐欺か何か、悪いことに巻き込まれたのではないかとさえ疑いました。だって、家計はいつもギリギリだといわれていましたから」

 

和代さんが投資を始めたのは、今から30年以上前、1990年代初頭のバブル崩壊直後でした。当時は郵便局の定額貯金の金利がまだ高く、周囲が貯蓄一辺倒だったころです。

 

「最初はパート代を貯めるだけのつもりでしたが、たまたま銀行の窓口で勧められた投資信託に数万円を入れたのがきっかけでした。その後、2000年代に入ってネット証券が普及し始めたころ、思い切って自分でも口座を作ってみたんです。ITバブルが弾けたあとや、2008年のリーマン・ショックで世の中が騒がしいときも、私は『今が安いのかな』と、配当が出るような優良企業の株を少しずつ買い足していきました。配当金が入っても手は付けず、そのまま別の株を買う資金に回す……。そんなことを30年、ただ機械的に繰り返してきただけなんです」

 

和代さんは、博さんに心配をかけたくないという思いと、もし十分な老後資金があるとわかったら無駄遣いが増えるだろうと考え、投資のことは一切秘密にしていたといいます。一方の博さんは、老後は年金とわずかな退職金だけが頼りだと思い込み、質素倹約を心がけ、趣味の釣りも、晩酌のビールも、ほどほどにして暮らしてきました。

 

そして和代さんも70代になったころ、終活の一環として、これまでの30年について、包み隠さず話すことに決めたといいます。そんな和代さんに対して、博さんは「感謝しかない」と語ります。

 

「妻は本当、私のことを知っていますね。もっと早く知っていれば、安心して無駄遣いをしていたでしょう。この年になったら、あれがほしい、これがほしいなどという欲もありません。しかし、これからは大きな安心感があります。それでも身の丈にあった暮らしは、これからも続けていこうと思っています」