社会保障制度が整備された現代日本においても、老後の暮らしは決して安泰とは限りません。特に低年金での生活は、家計の逼迫や健康への影響、孤立の深まりといった深刻な課題を抱えています。老後の生活を守るための制度や支援の存在を知り、絶望を防ぐ道を探ることが求められています。
「もう死ぬしかないのか…」70歳独り身の男性、〈年金月7万円〉で光熱費も払えない残酷な現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

70歳独り身、月7万円の年金で直面する「残酷な現実」

都内・築50年を超えるアパートで暮らしをしている田中茂さん(仮名・70歳)。30代で結婚しましたが、事業に失敗したことが引き金となり離婚。以来、独り身だといいます。現在、生活を支えているのは年金。しかし、厚生年金の加入期間が短かったこともあり、現在、受け取っているのは月7万円強。腰を痛めてからは十分に働くことができず、田中さんの唯一の収入源になっています。

 

田中さんにとって、まず生活を圧迫するのは家賃です。

 

「家賃が3万5,000万円。これを払ってしまうと残るは半分しかありません」

 

電気代、ガス代、水道代といった光熱費や食費のすべてを家賃を差し引いた金額で賄わなければなりません。特に冬場や夏場は、光熱費の支払いが滞りがちになり、電気を止められそうになったことも一度や二度ではないといいます。

 

「もったいないから、ガスはほとんど使わない。お風呂? 基本、水です。温かいお湯なんてもってのほか。湯船に水をはって、ぬるくなるのを待つ。何とか入れる温度になるまで我慢です」

 

食事についても、その内容は極めて貧しいものです。

 

「近所のスーパーでは土日にもやしが9円になる。あと袋にぎゅうぎゅうにはいったパンの耳だね。米? 1年以上、食ってないね」

 

前述の通り、田中さんは腰に持病を抱えていますが、年金の中から医療費を捻出することが困難なため、通院をためらう日々が続いているといいます。これは、経済的な困窮から必要な医療を受けられない「医療ネグレクト」の状態に他なりません。

 

「この前は咳がひどくてね。病院に行きたかったけど、初診料とか薬代を考えると、無理だよね、病院に行くのは。結局、我慢するしかなかった」

 

さらに深刻なのは、地域から孤立し、誰にも相談できない孤独な状況です。

 

「携帯電話も解約したから。これ(スマートフォン)、もう電源が入るかもわからない。親戚とは元々疎遠だけど、友達とももうほとんど連絡をとっていない。何かあっても、どこに助けを求めていいのかもわからないし、迷惑をかけたくない正直、もう死ぬしかないのか……と考えることもある」