リタイア後に始まるセカンドライフ。誰もが穏やかな日々を思い浮かべますが、一転して悲劇的な末路を迎えることも。特に仕事一筋だった人ほど、深刻な問題に直面することも珍しくありません。
「頼む、3万円だけ貸してくれ」と声をかけてきた62歳・元上司。〈退職金4,000万円〉のはずが…45歳元部下が知った、恩人の哀れな末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金4,000万円で順風満帆のはずが…元上司との再会

都内IT企業で働く松本健太さん(45歳・仮名)が、加藤和彦さん(62歳・仮名)と再会したのは、加藤さんが定年退職してからおよそ2年後のことでした。加藤さんは、かつて松本さんが新人の頃、プロジェクトで大失敗した際に全責任を負ってかばってくれた恩人のような存在です。部長クラスの退職金は4,000万円ほどという噂で、誰もが羨む順風満帆なセカンドライフを送っていると思われていました。

 

「加藤(元)部長は、定年で会社を退職されていたので、2年ぶりの再会でした。突然、街中で声をかけられて、本当にびっくりしました」と松本さんは振り返ります。しかし、その再会は、松本さんにとって困惑を伴うものでした。喫茶店で向き合った元上司の口から出たのは、思いがけない金銭の要求だったからです。

 

「いや、本当に悪い。すぐに返すから、3万円だけ貸してくれないか」

 

松本さんは、かつての威厳と自信に満ちていた上司の姿とのギャップに言葉を失ったといいます。理由は聞けませんでしたが、「何か困っているのだろう」と察し、言われるままに3万円を工面しました。

 

この直後から、元上司に関する噂が松本さんの元に届き始めます。

 

「『加藤さんが、いろんな人に金を借りて回っているらしい』と聞いて、正直、驚きました」

 

加藤さんは、現役時代からギャンブル好きとして知られていました。

 

「部長はよく『あのスリルがたまらん』と楽しそうに話していました。根っからの勝負師だからこそ、仕事でも圧倒的な成果を出せるのだろうと言われていました」

 

しかし、定年退職後、時間を持て余したからか、そのギャンブルにさらにのめり込んでいったというのです。退職金を使い果たし、さらにはそれまで貯めてきた貯金にも手を出した結果、家族仲が崩壊したそうです。

 

「消費者金融にも手を出して、多額の借金まで抱えているらしい、と。奥様とは離婚されたそうです……」

 

松本さんは元上司の転落に、ただただ困惑するばかりです。自分が貸した3万円は、きっと返ってこないだろう……それだけは確実でした。