成人後も親と同居。子が安定した職業に就いていれば、親は安心この上ないでしょう。しかし、同居しているとはいえ、子どものことをすべて知っているとは限りません。親が知らない一面を持っているのも当然のこと。その内容があまりにも衝撃的なことも珍しくありません。
ごめん、もう限界なんだ…〈月収25万円〉28歳・公務員のひとり息子が突然の失踪。両親が息子の部屋で見つけたメモの「衝撃内容」 (※写真はイメージです/PIXTA)

職員個人に責任を負わせない、組織的な対策が急務

近年、顧客や利用者からの度を越した要求や理不尽なクレーム、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻な社会問題となっています。

 

厚生労働省は、カスハラを「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。正当な要求やクレームと、労働者の尊厳を傷つけるハラスメントとの間には、明確な境界線があるのです。

 

特に、公務員は深刻なカスハラの被害に晒されています。全日本自治団体労働組合(自治労)が2020年に行った調査によると、地方自治体職員の3.7%が「住民からの迷惑行為や悪質クレームを日常的に受けている」と回答。「時々受けている」も合わせると46.0%と、半数近くになります。部署別にみていくと、特に多いのが「生活保護関連」で、「日常的に受けている」が16.2%、「時々受けている」が60.7%と、実に8割弱にもなります。51.3%が、過去3年間に住民などから「暴力や悪質なクレームを経験したことがある」と回答しています。またその内容としては「暴言や説教」が最も多く、「長時間のクレームや居座り」、「複数回に及ぶクレーム」、「担当者の交替や上司との面談の要求、勤務先への投書や苦情」と続きます。

 

こうした悪質なクレームは、働く人々の精神に深刻なダメージを与え、うつ病や適応障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)といった精神疾患につながる危険性も指摘されています。拓也さんのケースは、個人だけではなく、誰の身にも起こりうる社会構造の問題なのです。もちろん、家族が本人の様子の変化に気づき、話を聞いてあげることは重要です。しかし、拓也さんのように、心配をかけまいと悩みを打ち明けられないケースも少なくありません。個人の努力だけでこの問題を解決するには限界があります。

 

今、求められているのは、働く人々を組織全体で守るための体制構築です。国は法改正により、企業に対してカスハラ対策を「努力義務」としていますが、それに留まらず、より実効性のある取り組みが不可欠です。実際に、東京都では全国に先駆けて「カスタマーハラスメント防止条例」が施行されるなど、社会的な対策はすでに始まっています。企業や自治体においても、悪質なクレーマーに対して毅然とした態度で対応するマニュアルの整備、職員が1人で対応せず複数人で対応するルールの徹底、弁護士や警察など外部機関との連携、そして職員が安心して悩みを相談できる窓口の設置といった具体的な対策が広がりつつあります。

 

「しばらくして、息子は戻ってきました。突然、逃げ出したことを謝っていましたが、そんなことはどうでもいい。ただ無事でよかったです」

 

[参考資料]

厚生労働省『カスタマーハラスメント対策業マニュアル』

全日本自治団体労働組合(自治労)『職場における迷惑行為、悪質クレームに関する調査』