大切な家族との別れは、常に突然訪れるものです。 悲しみに暮れる暇もなく、遺族の前には葬儀の手配から膨大な事務手続き、家財の整理という現実的な課題が山積みとなります。特に親が一人暮らしをしていた場合、その負担は計り知れないものになることも少なくありません。ある親子のケースから、終活の重要性についてみていきます。
すごいよ、親父…79歳で急逝した父が遺した「青いファイル」の衝撃。51歳息子が震えた「完璧すぎる終活」の中身 (※写真はイメージです/PIXTA)

「もしもの時はこれを見ろ」父の言葉通りに進んだ、迷いなき数日間

父が倒れたと連絡を受けたとき、パニックになりかけた私を救ってくれたのは、父自身の準備でした」

 

都内で会社員として働く小林直樹さん(51歳・仮名)は、昨秋、心不全で急逝した父・和男さん(享年79・仮名)との最期の数日間をそう振り返ります。

 

3年前に妻を亡くして以来、郊外の一軒家で一人暮らしを続けていた和男さんは、常々「俺に何かあったら、リビングの引き出しの一番上にある『青いファイル』を見ろ」と家族に言い聞かせていました。

 

直樹さんが駆けつけ、そのファイルを開くと、そこには「危篤時・死亡時の初動リスト」が挟まれていました。

 

「そこには、葬儀の規模、遺影に使ってほしい写真のデータ保存場所、さらには、すぐに連絡してほしい親友たちの氏名と電話番号が優先順位順に整理されていました。おかげで、親戚や父の友人に失礼のないよう迅速に連絡ができ、父が望んだ通りの温かい葬儀で見送ることができたんです」

 

さらに直樹さんを驚かせたのは、デジタル遺産の管理です。

 

「ファイルにはスマホのロック解除パスワードが記され、ホーム画面には『解約・手続き一覧』というショートカットが置かれていました。ネット銀行から、家族が知らなかったサブスク(定額制サービス)の解約手順まで完璧に記されていたんです。『解約しないと無駄金が出るぞ』という父のメモを見たときは、悲しみの中、思わず笑ってしまいました」

 

家財もすでに整理され、遺品整理業者の見積書まで同封されていたといいます。

 

「手続きに追われるはずの時間を、父との思い出を語り合う時間に変えてくれた。『すごいよ、親父……』と、思わず声がもれました。これらはすべて、父の優しさだったんですね」