老後の生活を支えるのは、現役時代に積み上げた資産だけではありません。十分な貯蓄や年金があっても、それを運用・管理する過程で生じる「夫婦の意識のズレ」が、長年築いてきた家庭の土台を壊してしまうことがあります。ある夫婦のケースを通じ、統計データが示す高齢期の幸福感と安心の正体に迫ります。
俺の金だ、文句あるか!資産1億円・69歳元役員の夫「1,000万円の投資」に失敗してもふんぞり返る姿に、66歳妻がプツン……それでも決して離婚しない理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

ああ、この人は私を人だと思っていないんだな……66歳妻、悟りの境地 

「あの人の口から『俺の金』という言葉が出た瞬間、何かがプツンと切れた気がして、急にすべてがどうでもよくなってしまったんです」

 

小林由紀子さん(66歳・仮名)。退職金なども含めた資産は1億円(もちろん持ち家)。元会社役員の夫・正一さん(69歳・仮名)との生活は、傍目には不自由のない優雅な老後に見えます。しかし、その内情は、正一さんが退職金から1,000万円を「旧友の怪しい投資話」に突っ込み、その大半を失ったことで一変したといいます。

 

今後の生活、そして自分たちの介護不安を訴えた由紀子さんに対し、正一さんは謝るどころか、不快そうに言い放ちました。

 

「俺が必死に働いて稼いだ金だ。どう使おうが俺の勝手だろう。お前だってこれまで不自由なく暮らしてこれたのは、俺のおかげだろう」

 

由紀子さんは、その一言を聞いた時の感覚をこう振り返ります。

 

「怒りが込み上げるよりも、何か波がサーッと引いていく感覚。『ああ、この人は私のことを1人の人間として見ていないんだな』と悟ったんです。私が毎日、夫の健康を考えて作った食事も、夜中に何度も起きて看病したことも、義親を看取った苦労も……すべては『俺が養っているのだから当然』と思っているんですよ、あの人は。そう思ったら、もうこの人の妻ではいられないなと思いました」

 

それ以来、由紀子さんは正一さんに反対もしなければ、心配もしなくなりました。正一さんがどれだけ損をしようが「そう、大変ね」と他人事のように微笑むだけ。体調を崩したときも、淡々とおかゆを作って部屋に運ぶだけで、心配などしないといいます。

 

「夫は私が聞き分け良くなったと勘違いして、機嫌よく過ごしています。離婚!? しませんよ。この年齢になって生活レベルを下げるなんて非合理的です。私も夫との関わりを見直して、自分の人生を豊かにすると決めたんです」