(※写真はイメージです/PIXTA)
銀行のローン審査で突きつけられた、衝撃の未来
住宅メーカーの営業担当者からも「問題なくローンを組めるでしょう」と太鼓判を押され、地元の銀行へ住宅ローンの相談に訪れました。
源泉徴収票や物件資料を提示するナオキさん。応対した融資担当者からは後日、融資審査結果を伝える旨を告げられ、その日は帰宅します。
夫妻はすっかり安心し、夢のマイホームのことで頭がいっぱいに。しかし数週間後、担当者からかかってきた電話の内容は、信じられないものでした。
「申し訳ありません。審査部のほうで、融資の承認が下りませんでした」
驚くナオキさん。理由を聞いても「総合的判断で」とのことで、詳細を聞くことはできません。納得できず、住宅メーカーに相談へ行きました。そこで指摘されたのは下記の2点。
・転職直後で勤続年数がリセットされている
・収入が大幅に減少しているが、それにもかかわらず貯蓄が少ない
多くの金融機関では、住宅ローンの審査基準として「勤続1年以上(場合によっては3年以上)」を設けています。ナオキさん夫婦は、宮崎にUターン転職してからまだ1年未満。東京での勤務実績は考慮されず、機械的な審査基準によって「安定した収入が継続しているとは判断できない」とみなされた可能性があります。
また、ナオキさん夫妻は、東京で世帯年収1,000万円を超えていたにもかかわらず、現在の貯蓄額が300万円です。この場合、家計の収支構造に問題がある可能性が高く、その状態で新たに4,500万円のローンを組むのは、将来の教育費や不測の事態を考慮すると、リスクが高すぎると判断された可能性があります。
Uターン移住という大きな決断が、思わぬ形でマイホーム計画の足枷となってしまった瞬間でした。
理想の取捨選択
ローンが組めないという事実に、夫妻は愕然とします。そして、これを機に自分たちの将来計画を冷静にみつめ直した結果、たとえローンが組めたとしても、その後の生活が極めて厳しいものになることに気づきました。
「物価が安い」というのは、あくまで家賃や土地といった一部に限った話であり、光熱費等は東京と大差ありません。また、地方では車が必須なため、維持費が新たな負担としてのしかかります。子どもが県外の大学に進学する場合、仕送りの負担は遥かに重くなるでしょう。そしてなにより、世帯年収が4割近く下がっているにもかかわらず、将来的なキャッシュフローを意識できていなかった点が問題です。
審査に落ちたことで、夫婦はすべての希望を叶えることは不可能という現実に直面。そして、子どもの教育、住宅、趣味……どれを優先し、どれを諦めるのか、辛い取捨選択を迫られました。