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1人で祖母の家に泊まりに来た孫だったが…
今年の夏休みは、小学4年生の孫・翔太くんが初めて一人で泊まりに来てくれたという髙橋良子さん(68歳・仮名)。夫を亡くして5年。以来、広い自宅でひとり暮らしをしてきました。そのため、孫の訪問は楽しみで仕方がなかったようで、「好きなハンバーグの材料を揃えて、新しいゲームソフトも用意して、布団も日に当ててふかふかにして。本当に、指折り数えて待っていたんです」といいます。
自宅があるのは、息子家族が暮らす都内のマンションから電車を乗り継いで約3時間。大人ならなんてことない距離かもしれませんが、10歳の孫がきちんと電車を乗り継いでたどり着けるのか……心配で心配で仕方がなかったといいます。しかし、その不安は的中。待ち合わせる予定だった駅で2人はなかなか落ち合えず右往左往したといいます。やっとのことで会えたとき、孫の翔太くん(10歳・仮名)から涙目でこう訴えられたそうです。
「おばあちゃん、全然スマホ使えないんだもん」
位置情報を共有したり、写真を送り合ったりしたら、もっと早く会えたはずだというのです。「正直、私にはチンプンカンプンで。とりあえず、気を直してもらおうと必死でした」と髙橋さん。夕食には、好物のハンバーグを一緒に作り、美味しくいただきました。スタートは波乱含みだったものの順調だと思っていましたが、そうではなかったといいます。
その夜、お風呂を終え、寝ようとしていると、母親と電話で話している翔太くんの声が部屋の外まで聞こえてきました。
「ねえ、お母さん。もう僕、帰りたい」
……なぜ?
「だって、Wi-Fiないから動画すぐ止まるし、暇なんだもん。なんか、この家、全部古くさいし、なんかうす暗いんだよね。それに、僕、布団じゃなくてベッドじゃないと眠れない」
「もう帰りたい」という孫の言葉に、良子さんはショックで声が出ず、ただ立ち尽くすだけだったといいます。その手には、渡すタイミングを計っていたお小遣いの入った茶封筒。翔太くんのために、毎月の年金12万円から少しずつ貯めた5万円だったといいます。
「古くさい、ですか。そう言われてみれば、そうなのかもしれません。夫が建ててくれたこの家も築40年ですから。ワイファイ? よく分からないけど、私には必要ないので……」