年を重ねていくなかで、自宅に住み続けるか、それとも他に引っ越しをするか、住み替えを検討する人は珍しくありません。しかし、熟考を重ねて答えを出したとしても、それが正解とも限らず、さらなる変更を余儀なくされることも。元公務員男性のケースをみていきます。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「その日も皆で囲碁を打ち、談笑して、私は先に『お先に』と失礼してラウンジを出たんです。ですが、自室に戻る途中で、愛読書をラウンジのテーブルに忘れてきたことに気づきまして。それで、すぐに引き返したんです」
ラウンジの扉に手をかけようとしたその時、中から聞き覚えのある仲間たちの声が漏れてきたといいます。自分の名前が聞こえ、思わず足を止めてしまいました。
「『鈴木さん、真面目すぎるんだよな。元公務員だからか、何事も理屈っぽくて面白みがない』という声が聞こえました。『結局、俺たちが払った税金で楽してきたようなもんだろう。世間知らずなんだよ』と。それに同調するような、皆の笑い声が響いたんです」
この陰口で、鈴木さんの心は完全に折れました。
「この年になって新たに友人ができることなんてないじゃないですか。しかし、ここにいる人たちとは価値観が違う。もうここでは暮らしていけないと思いました」
この一件を受け、鈴木さんは退去を決意。入居からわずか1年のことでした。