(※写真はイメージです/PIXTA)
タワマン高層階に住むエリート部長の「ため息」
大手メーカーで部長職を務める中田健一さん(48歳・仮名)。年収は1,500万円に達し、都心のタワーマンションの30階で、妻と一人息子と暮らしています。その姿は、同僚や友人から見れば、まさに「勝ち組」そのものです。
「部長って、XXのタワマンの高層階に住んでいるんだって。すごいよなぁ」
会社の飲み会などでは、そんな会話が耳に入ることもあるとか。
「すごいことなんて、まったくないんです。そもそもこのマンションも、身の丈にあっていないといいますか……」
億を超える買い物をしたのは、今から5年以上前のこと。きっかけは、中田さんの妻の希望だといいます。
「あのころの妻は、よく『(友人の)XXさん一家がタワマンに引っ越した』『ママ友との集まりで、やっぱり良いマンションに住んでいると一目置かれる』と言っていました。私自身は、そこまで住まいにこだわりはなかったのですが」
妻の強い希望は、「友人たちに自慢できる暮らしがしたい」という一点。しかし、都心のタワーマンション、それも高層階となれば価格は億を超えます。当時の中田さんの年収では、おいそれと手が出る金額ではありませんでした。
「頭金をどうするのか、という最大の壁がありました。私の貯蓄だけでは足りません。結局、退職した私の父親に頭を下げて、多額の資金援助をお願いしたのです」
健一さんの父親は、老後のためにと大切に蓄えていた退職金から頭金の一部を用立ててくれたといいます。
「父はもともと、身の丈に合わない買い物には反対の考えでした。『本当に大丈夫なのか』と何度も心配してくれましたが、最終的には私たちのために援助してくれた。今でも父には感謝しかありません」
晴れて手に入れたタワマンでの暮らし。しかし、それだけではありませんでした。重くのしかかっているのがひとり息子の教育費です。
「中学受験して、第1志望の学校に受かったんですが……やっぱり学費が高いですね。そのまま大学までいけると思うんですが、志望の学部に入るためには普段の成績が大切。そのために塾に通っていますが、これまた高い。学費と塾代で……月々20万円程度が出ていく。息子の将来のためと思えばこそですが、正直、厳しいですね」
それに加え、タワマン特有のコストも家計を圧迫。最近の物価高騰を受けて、管理費や修繕積立金も値上がりしたといいます。
「今年の春から月3万円上乗せ……厳しいです。ローン返済と合わせて月25万円ほど。この暮らしを維持するための経費が本当に高いんです。サラリーマンの勝ち組? 確かにそう言われることはありますが、まったく余裕がありません」
冒頭にあったように、中田さんに向けられる羨望の眼差し。いっそのこと、「そんなんじゃない!」「本当は家計は火の車」などと、本当のことを話したい衝動に駆られることもあるとか。それでも言えないのは、「私もみっともないプライドがあるからなんでしょうね」と中田さん。深すぎるため息をつきます。