(※写真はイメージです/PIXTA)
「助けて」と言えない社会の呪縛
決してポジティブなイメージがあるとはいえない「生活保護」。なぜ、私たちは「助けて」と声を上げることが、これほどまでに難しいのでしょうか。
その背景には、生活保護制度に対する根強い誤解と偏見があります。一部の不正受給がメディアで大きく報じられることで、「生活保護」=「ズルい」「甘え」などのイメージが先行しているのです。
しかし、実際のデータを見ると、その印象が実態とは大きくかけ離れていることが分かります。厚生労働省の資料によると、2023年度の保護費総額2兆7901億円のうち、不正受給の額は97億3563.8万円。保護費総額の0.5%以下です。それにもかかわらず、不正受給が大きくクローズアップされ、悪評が流布されています。
このようなことを受けて、制度の利用が妥当だとしても、申請をためらうケースは珍しくありません。もちろん不正は許されるべきではありませんが、本当に助けを必要とする人が声を挙げられず、見過ごされている現実も看過できません。
貧困は孤立を生みます。そこで問題になるのが孤独死リスク。2024年、警察が取り扱った1人暮らしで自宅で亡くなった人は全国で約7.6万人で、そのうち65歳以上は約5.8万人。さらに死後8日以上経過して発見され、生前社会的に孤立していたと推測される「孤立死」は約2.1万人でした。治療費を払えずに病状の悪化、冷暖房費を節約しての体調不良、栄養バランスの取れない食事による体調悪化……すべては貧困からの孤立化が原因といえるでしょう。
そんな悲劇を未然に防ぐためにも、まずは声を挙げることが大切です。また私たち一人ひとりが、「助けて」と声を挙げられない人たちの声なき声を見逃さないことが重要です。
佐藤さんは、対応してくれた職員の強い勧めもあり、最終的に生活保護を申請。いま生活の再建に努めているといいます。
[参考資料]
厚生労働省『全国厚生労働関係部局長会議資料』
内閣府『「孤独死・孤立死」の実態把握に関するワーキンググループ資料』