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高収入世帯でも要注意…住宅ローン返済「3つの罠」
「返せると思っていた……」
高収入であっても返済計画が頓挫する……珍しいことではありません。住宅ローン返済には、3つの罠が潜んでいます。
罠1…「借りられる額」と「無理なく返せる額」は違う
多くの人が陥る最初の罠は、銀行が提示する「融資可能額」を「返せる額」だと勘違いしてしまうことです。銀行はあくまで年収や勤務先といった情報を元に「貸せる上限額」を機械的に算出しているに過ぎず、個々のライフプランまで考慮しているわけではありません。本当に重要なのは、税金や社会保険料が引かれた後の「手取り収入」から算出した「無理なく返せる額」です。
一般的に、年収に占める年間返済額の割合である「返済負担率」は、20~25%以内が理想とされます。住宅金融支援機構『2023年度 フラット35利用者調査』によると、住宅ローン利用者の返済負担率は全国平均で21.1%となっています。
高橋さんの場合、額面年収1,000万円に対する年間返済額約271万円(金利1.5%・35年で計算)の返済負担率は27.1%となり、この時点ですでに理想とされる25%を上回っています。 さらに深刻なのは、手取り年収で見た場合です。年収1,000万円の手取り額は一般的に約720万円。これで計算し直すと、返済負担率は約37.6%にまで達します。これは収入の4割近くをローン返済に充てている計算になり、家計が極めて硬直化しやすい危険な状態です。
罠2…見落としがちな「3大コスト」を軽視してはいけない
住宅ローン破綻の原因は、月々の返済だけではありません。高橋さんを苦しめたように、家計には見落としがちなコストが存在します。
第1に「家の維持費」です。固定資産税や都市計画税、火災・地震保険料は毎年かかり続けます。さらに10~15年もすれば、外壁塗装や給湯器の交換といった数百万円単位の修繕費も必要になります。
第2に「教育費」です。これは子どもの成長とともに膨らむ聖域なきコストといえます。文部科学省『令和3年度子供の学習費調査』によれば、幼稚園から高校まですべて公立に通った場合でも、子ども1人あたりの学習費総額は約574万円、すべて私立なら約1,838万円にも上ります。
第3に「収入の変動リスク」です。高橋さんのようなボーナスカットや、病気・ケガによる休職、転職など、収入は必ずしも右肩上がりとは限りません。こうしたリスクに備え、十分な貯蓄を用意しておくことが極めて重要です。
罠3…「自分は大丈夫」という根拠のない自信
そして最も根深いのが、心理的な罠です。年収が高い人ほど、「自分は平均より稼いでいる」「何かあっても何とかなる」という楽観的な思考に陥りやすい傾向があります。プライドが邪魔をして、家計の悪化をパートナーや専門家に相談できず、一人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。
高橋さんも「まさか自分がローンを返せなくなるとは思ってもみませんでした」と語ります。その自信が、冷静な資金計画を立てる目を曇らせ、少しずつ、しかし確実に家族を追い詰めていったのです。
家族の幸せの象徴であるはずのマイホーム。しかし、一歩間違えれば、ローン返済が家族全員を苦しめることになりかねません。高収入だからと過信せず、最悪の事態を想定した堅実な資金計画を立てることこそが、家族の未来を守る唯一の方法といえるでしょう。
[参考資料]
住宅金融支援機構『2023年度 フラット35利用者調査』
文部科学省『令和3年度子供の学習費調査』