誰もが夢見るマイホーム。特に高収入世帯にとっては、容易に手の届く現実かもしれません。しかし、一見盤石に見える資金計画にも、思わぬ落とし穴が潜んでいます。ローン返済が厳しくなり、せっかく手に入れた我が家を売らざるを得なくなったある家族のケースをみていきましょう。
〈年収1,000万円〉40歳のエリートを襲った「住宅ローンの罠」。ローン8,000万円が「地獄」に変わったマイホーム、3つの誤算 (※写真はイメージです/PIXTA)

「まさか自分が…」年収1,000万円・エリート会社員の誤算

世界でも名の知れた有名企業に勤める高橋健太さん(40歳・仮名)。年収は1,000万円を超え、世間ではエリートサラリーマンといわれる人物です。そんな彼が語ってくれたのは、マイホーム計画の顛末。

 

「自分の年収を顧みて、8,000万円の住宅ローンなんて、正直なんとでもなると思っていたんです」

 

健太さんが購入したのは、都心へのアクセスもいい人気のエリアの新築マンション。価格は4LDKで9,500万円。頭金として貯蓄から1,500万円を支払い、残りの8,000万円を35年ローンで組みました。妻と2人の子どもたち、そして念願のマイホーム。健太さんは絵にかいたような幸せな毎日を想像していました。

 

銀行の担当者は「高橋様の年収でしたら、1億円までご融資可能ですよ」と太鼓判を押してくれたといいます。その言葉が、健太さんの自信をさらに強固なものにしました。

 

「この年収で返せないはずがない。周りも同じような家を買っていましたし、自分も大丈夫だろうと……」

 

しかし、その根拠のない自信こそが、家族を奈落の底へ突き落とす最初の罠だったことに、当時の健太さんは気づく由もなかった。

 

変化の兆しは、購入からわずか1年後に訪れました。世界的な不景気の煽りを受け、会社の業績が急激に悪化。健太さんの年間400万円近くあったボーナスが、半減してしまったのです。

 

「いきなり年間200万円の収入減です。月々の返済は約22.6万円。ボーナス払いは設定していなかったので、収入減が直接響きました」

 

追い打ちをかけるように、固定資産税の通知書が届きます。年間15万円近い出費。しかも今は減税の優遇が受けられていますが、それは購入から5年間だけです。さらに、子どもの成長とともに、塾や習い事の費用は膨らんでいきます。子どもの将来のための出費は、家計が苦しくても削るわけにはいきません。

 

気づけば、赤字を補填するためカードローンに手を出し、それでも足りずに消費者金融のドアを叩いていました。徐々に夫婦喧嘩が絶えなくなったといいます。

 

「返せると思ってたんです。でも、何かがおかしい。どこで、何を間違えてしまったのか……」

 

売却しようにも、住宅ローンの残債が売却価格を上回る「オーバーローン」の状態では売るに売れません。高橋さんの場合、不動産価格の上昇を受けてオーバーローンにはならず、売却の方向で進めているといいます。