(※写真はイメージです/PIXTA)
給食再開の日に食卓に並んだ夕食は…
長く苦しかった夏休みが明け、新学期がスタートしました。給食も再開され、仕事に向かう道すがら、その日はいつもより体が軽く感じられたそうです。
「『今日は給食がある』。それだけで、朝から涙が出そうでした。温かくて栄養のあるものを、お腹いっぱい食べられる。子どもたちが我慢しなくていい。ただそれだけのことなのに、これ以上ないほどの安心感に包まれたんです」
仕事を終え、夕飯の買い物のためにスーパーへ向かった時のエピソードを、美咲さんは話してくれました。その日は給料日でもあり、精肉コーナーで、いつもは通り過ぎるだけの国産豚の生姜焼き用肉 (100gあたり158円) に目が留まりました。普段購入する鶏むね肉 (100gあたり60円台) と比べれば大きな出費でしたが、美咲さんは迷わずその肉を手に取りました。
その夜の食卓には、湯気の立つ白米と、少し濃いめに味付けされた豚の生姜焼きが並びました。
「子どもたちは『生姜焼き! ママ、ありがとう!』と、目を輝かせてお肉を頬張ってくれて。その姿を見て、泣き笑いがとまらなかったですよ」
美咲さんのような母子世帯が置かれている状況は、決して特殊なものではありません。厚生労働省の『令和3年度全国ひとり親世帯等調査』によると、母子世帯における母親自身の平均年間就労収入 (仕事での収入) は236万円です。月収に換算すれば約19.6万円となり、そこから税金や社会保険料が引かれると、美咲さんのように手取り15万円前後で生活している世帯は少なくないのが実情です。
また養育費についても、「取り決めをしている」母子世帯は46.7%と半数以下です。取り決めをしていない最大の理由は「相手と関わりたくない」(34.5%) でした。なかには元配偶者と関わることが危険なケースもあります。慰謝料の取り決めを行わないことへの批判もありますが、現実的に厳しい事情もあるのです。
学校給食が再開され、心の安定を取り戻した美咲さん。もう少し収入アップを目指したいと、転職を検討しているといいます。
[参考資料]
厚生労働省『令和3年度全国ひとり親世帯等調査』