(※写真はイメージです/PIXTA)
なぜ、月8万円の保険料は「重荷」になっていたのか
FPは、Aさんの辛い経験に深く共感したうえで、冷静に事実を分析しました。
1.「貯蓄と保障」を兼ねる保険は、Aさんの“後悔”につけこんでいた
FPはまず、Aさんの母親が後悔した「個室代」「健康食品代」「旅行代」は、いずれも公的な医療保険ではカバーされない費用であることを確認しました。これらは、万が一の際に「手元にある現金(貯蓄)」で賄うべきものです。
しかし、Aさんが加入した貯蓄型やドル建ての保険は、手数料が高く、貯蓄や投資としての効率が極めて悪い商品でした。Aさんは「貯蓄」のつもりで月5万円も支払っていましたが、そのお金は効率的に増えることなく、むしろ自由に使えない形で塩漬けにされていたのです。もしこれをNISAで運用していれば、手元資金はもっと豊かになっていた可能性がありました。
2.「公的保険は足りない」は、半分ホントで半分ウソ
Aさんの「公的保険だけでは足りない」というトラウマ。しかし、営業担当者はそのトラウマを利用し、「だから民間の医療保険を手厚くすべき」という結論に誘導しています。
FPは、日本の「高額療養費制度」がいかに強力であるかを改めて説明。Aさんの年収であれば、医療費の自己負担は月10万円以下に収まります。つまり、治療費そのものは公的保険で十分カバーできるのです。Aさんが加入していた高額な医療保険は、すでに支払っている公的保険と保障が大きく重複する「二重払い」の状態でした。Aさんの家庭が本当に備えるべきだったのは、治療費ではなく、母が後悔したような「治療以外のプラスアルファの費用」を賄うための現金貯蓄だったといえるでしょう。
3. ライフステージの変化を無視した“一生涯の死亡保障”
Aさんの子どもはもうすぐ独立します。妻には遺族年金も支給されます。いま、Aさんにもしものことがあっても、必要な死亡保障額は、若いころに比べて大幅に減少していました。しかし、更新のたびに保障額を見直すことなく、「一生涯」という言葉の響きのよさだけで、高額な保険料を払い続けていたのです。