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母親の“不安”が生んだ、月8万円の保険料
Aさん(52歳)は、都内の中堅企業に勤める真面目なサラリーマン。妻と、大学に通う子どもが一人います。彼がまだ学生だった20代のころ、父親が40代の若さで大腸がんに倒れ、闘病の末に亡くなりました。
当時、父親の生命保険への加入は不十分で、Aさんの母親はお金の工面に大変な苦労をしました。長期入院で傷病手当金の支給期間は切れ、障害年金だけでは収入は激減。公的保障で医療費そのものは抑えられても、母親の後悔は尽きませんでした。
「周りの目を憚りながら嘔吐する夫を個室に入れてあげたかった」
「体に良いという健康食品も、試してあげられなかった」
「治療法がないと告げられたとき、最後に家族旅行へも行けなかった」
そんな悲しみと後悔の真っ只中にいる母親のもとへ、親戚の紹介で、押しの強い保険外交員がやってきました。
「あのとき、これさえあれば……」母親の願いと、父を助けられなかったAさん自身の無力感が重なり、勧められるがままにAさんは最初の保険に加入したのです。
それが、Aさんの保険人生の始まりでした。結婚、子の誕生というライフイベントのたびに、同じ担当者から「安心のため」と保険を追加。分厚いファイルになった保険証券は、Aさんにとって家族への責任を果たす「お守り」のような存在でした。
しかし、子どもの学費が想定以上にかさみ、自身の老後資金に不安を覚えたAさんは、FPに相談。そこで初めて、その「お守り」が、実は資産を蝕む「重荷」であったことを知るのです。
〇貯蓄型終身保険(20代で加入):月3万円
(母を安心させるため、最初に加入した「一生涯の保障」)
〇医療保険(がん・三大疾病など特約てんこ盛り、貯蓄型終身保険加入直後に20代で加入):月1万円
(「公的保険だけでは足りない」という父の闘病時の記憶から)
〇ドル建て終身保険(30代で加入):月2万円
(「円だけでは危険。資産運用も兼ねて」と勧められた)
〇個人年金保険(40代で加入):月2万円
(職場で職域営業の若い担当者から懇願され、「まあ貯蓄だし」と契約)
保険関連の支払いだけで、合計月々8万円。Aさんは、この重い固定費から解放されるのでしょうか。