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「これで老後は安泰だ…」30年ローン完済の夜に夫婦で涙。しかし、その“幸せ”は一枚の紙で地獄に変わった
「32歳でこの家を買ってから、1日でも早くローンを返し終えようと、とにかくがむしゃらでした。自分の支出はできるだけ削減、贅沢は絶対しない――すべてはこの家のためでした」
都内の中堅企業に勤める鈴木誠さん(仮名・52歳)。30年ローンでマイホームを購入したのは20年ほど前のことで、「失われた20年」という言葉が飛び交い、経済の先行きに誰もが不安を抱えていた時代でした。
国土交通省の「住宅市場動向調査」によれば、初めて住宅を購入する世帯主の平均年齢は40歳前後。平均よりも若くマイホーム購入に踏み切ったのは、当時生まれたばかりの息子のために、そして、できるだけ早くローン負担から解放され、老後に向けて準備を進めるためでした。
「当時、この郊外の新築分譲(戸建て)で5,500万円ほど。1,000万円ほど頭金を入れて、残りは30年ローンを組みました。毎月の返済額は、13万5,000円ほど。当時の給料からすると本当に負担は重かったです」
毎月、通帳からごっそりと引き落とされる返済額を見るたびに、ため息をつく。とはいえ、子どもの教育費や家族旅行などには、きちんとお金をかける。その代わり、自身は米の弁当を持参し、会社の同僚が飲みに行くのを横目に、毎日まっすぐ家に帰る。妻の陽子さん(仮名・48歳)もパートをしながら、1円単位で家計簿とにらめっこする。そんな日々が20年ほど続いたそうです。
繰り上げ返済も駆使しながら、住宅ローンをおよそ20年で完済。最後の引き落としを確認し、銀行から届いた「完済証明書」という一枚の紙を夫婦二人で眺めたとき、思わず歓喜の声をあげました。食卓には、久しぶりに少し高価なビールが並び、ささやかな祝杯をあげたといいます。
「妻が『本当にお疲れ様でした』と。私も、これで老後は安泰だと、心から安堵しました」