(※写真はイメージです/PIXTA)
基礎年金だけでも、息子からの仕送りを拒否する母
車を乗り継ぎ、約1時間半。佐藤健一さん(50歳・仮名)は、月に一度、県外にある実家を訪れるのが習慣になっています。この家に1人で暮らす母、千代さん(77歳・仮名)の様子を見るためです。
「5年前に父が亡くなってから、ずっと1人暮らしをしています。両親はずっと自営業をしていたので、年金は基礎年金だけだと思うんですよね。月7万円くらいですよね。それでどうやって暮らしているのか……いつも心配で」
健一さんがそう語るように、千代さんの暮らしぶりは、誰の目にも質素そのものでした。築40年を超える木造の家は、健一さんが子どものころからほとんど変わっていません。畳は擦り切れ、壁には染みが浮き出ています。食卓に並ぶのも、近所の畑で採れた野菜の煮物や、スーパーの見切り品などがほとんど。贅沢とは無縁の生活です。
令和7年、老齢基礎年金の給付額は、満額で月6万9,308円。とても基礎年金だけで暮らすのは難しい水準です。
「以前、『仕送りをしようか』と提案したのですが、『まだ大丈夫。健一たちのために使いなさい』と言って、絶対に受け取ってくれないんです。服も昔のものを繕って着ているし、趣味らしい趣味もない。ただただ、節約だけが生きがいになっているように見えて、息子としては胸が痛みます」
この日も、健一さんはドラッグストアで購入した栄養ドリンクやレトルト食品を手に実家を訪れました。しかし、千代さんは「ありがとうね。でも、こんなにたくさん、もったいないよ」と、嬉しそうな顔とは裏腹に、困ったように笑うのでした。その笑顔を見るたびに、健一さんの心配は募るばかりだったといいます。