まさか自分が直面するとは思わなかった…そんな出来事は、誰の人生にも突然訪れるものです。働きながら年金に頼る生活の中で、ある通知が暮らしを大きく変える瞬間があります。人が生きていくうえで避けられない「老後」と「終わり」の現実。その時、私たちはどのように備え、何を支えとするのでしょうか。
まさか、私も!? 〈年金月7万円〉〈パート月収8万円〉68歳女性。「遺族年金月8万円」の決定通知に震えが止まらない (※写真はイメージです/PIXTA)

将来が不安です…突きつけられた厳しい現実

鈴木良子さん(68歳・仮名)は、先日1通の封書を受け取りました。差出人は、日本年金機構。年金決定通知書。そこに記されていたのは、支給年額、96万円――。月額にして8万円。

 

「まさか、本当に私がもらえるなんて……」

 

良子さん自身の年金は月におよそ7万円。近所のスーパーで週4日パートとして働き、月に8万円ほどの収入を得ていますが、家賃や光熱費を支払うと、手元にはほとんど残りません。年金とパート給与だけで足りないときは、貯蓄を取り崩して対応。しかし、この先どれほど老後が続くか分からないなか、少しずつ減っていく貯蓄額に不安は膨らむばかりです。もし体を壊して働けなくなったら、貯蓄が減るスピードがさらに上がっていくのは確実でした。

 

良子さんと、3年前に亡くなった夫の一郎さん(享年70歳)は、30年以上を共に過ごしました。しかし婚姻届は出しておらず、いわゆる「事実婚」の関係でした。

 

「彼には、前の奥さんとの間に成人したお子さんがいました。私が後から入って、財産のことなどでややこしい思いをさせたくない、と彼が気にしていたんです。私も、籍という形にはこだわりませんでした。2人で一緒にいられれば、それで十分幸せでしたから」

 

2人が出会ったのは30代後半。互いに一度、結婚に失敗した経験があり、どこか慎重になっていたのかもしれません。それでも、2人の暮らしは穏やかで、周囲からは「本当にお似合いのご夫婦ね」と声をかけられる、誰もが認めるパートナーでした。毎年、春には一緒に旅行に出かけ、記念日には一郎さんが花束をくれる。そんなささやかな幸せが、永遠に続くかと思っていました。

 

しかし、その日常は突然終わりを告げます。一郎さんが、心筋梗塞で急逝しました。悲しみに暮れる間もなく、良子さんを襲ったのは厳しい経済的な現実だったのです。