言い訳、他責、反抗的な態度。手に負えない部下に、頭を抱えるリーダーは少なくありません。その原因を、本人の性格や能力の問題だと決めつけてはいないでしょうか。実はその態度の裏には、ある欲求が隠されていて……。本記事では、野本果甫氏の著書『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)より、反抗的な部下への具体的なアプローチ方法を紹介します。
激しい物言い、クレームまみれ…社内で“厄介者”扱いされる反抗的態度のベテラン社員が突然丸くなった「上司からのひと言」 (※画像はイメージです/PIXTA)

部下の反抗的な態度や言動が生まれる理由

反抗的な態度や言動は、リーダーにとってもかなりストレスです。なぜ部下は反抗的になるのか。これはマズローの欲求の5段階説で考えるとわかりやすいです。マズローの欲求の5段階説は、アメリカの心理学者アブラハム・マズロー氏によって提唱され、人間の動機付けに関する理論です。すべての人間は5つの基本的な欲求があり、その欲求が段階的に出てくると考えられています。図表がマズローの欲求の5段階説です。

 

出典:『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)
[図表]マズローの欲求の5段階説 出典:『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)

 

生理的欲求

最も基本的な欲求であり、食事・睡眠など生命を維持するために必要なものを満たそうとする欲求です。

 

安心・安全欲求

安全に生きるための欲求です。身体的な安全や経済的な安定などに対する欲求を指します。

 

社会的欲求(愛と所属の欲求ともいう)

人間は家族・友人・同僚などとのつながりを求めます。家族・友人に愛されることや、組織やコミュニティへ所属し、そこで仲間として受け入れられることがこの段階の欲求です。

 

承認欲求

他者から認められ尊重されたい、という欲求です。人は他者から「自分は価値のある存在だ」と認められたい、という強い欲求をもっています。

 

成長・貢献欲求(自己実現の欲求ともいう)

最も高次の欲求で、自己成長や自己実現を追求したい、という欲求です。誰かの役に立ちたい、という貢献欲求もここに入ります。

 

マズローの欲求の5段階説では、欲求は下から順に満たされるもので、下位の欲求が満たされて初めて上位の欲求が出てくるとされています。

 

私の経験からも、どんなにやる気がなさそうに見える人でも「成長・貢献欲求」はもっています。しかし「社会的欲求」と「承認欲求」が満たされないと「成長・貢献欲求」つまり「仕事で成長したい」「会社やチームに貢献したい」などとは思わない、ということです。上司との関係が最悪で「何を言っても否定される」「この会社にいるのが苦痛」と不満を募らせている社員がいたとして、その社員が「成長したい」「チームに貢献したい」などと思うでしょうか?