目の前の業務を早く片付けるために、部下にすぐ答えを教えるか。時間はかかっても、部下の成長のために、問いかけて考えさせるか。多くのリーダーは、日々の忙しさから前者を選びがちです。しかしその積み重ねが、自ら考えない“指示待ち部下”と、すべて自分で背負い込む“多忙なリーダー”という、最悪の悪循環を生み出しています。本記事では、野本果甫氏の著書『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)より、部下を育てる質問の仕方を紹介します。
わかりません…コールセンターで流れるナゾの空気。勤続5年、ベテランオペレーター部下の「返答」に上司が愕然としたワケ (※画像はイメージです/PIXTA)

勤続5年、ベテランなのに「わからない」と答える部下

私がコールセンターでリーダーをしていたときの話です。

 

多くのコールセンターでは、すべての応対を録音しています。コールセンターに電話したとき「この会話は品質向上のために録音されております」というメッセージを聞いたことがあると思います。

 

私もリーダーのときに実際に録音された応対を聞いてフィードバック面談を行っていました。コーチングを学んでいるとき、オペレーターに考えてもらうために「いま、あらためて音声を聞いてみて、どのように対応すればよかったと思いますか?」と質問したところ、「わからない」という回答が返ってきました。5年以上勤めているベテランのオペレーターだったので、内心「長年仕事しているのに、なんでわからないの?」と当時は思いました。

 

しかしよくよく考えてみると、それまで私が一方的に改善点を伝え、アドバイスしてきたため、オペレーターは「答えはもらえるもの」と思っていたのだと思います。当時の私は部下のかわりに、どうすればよいかを考え、アドバイスや指示をしていたため「部下が自分で考える」ように接していなかったことに気づきました。

 

それに気づいてからは「次の面談のときは、最初にどのように応対すればよかったか、〇〇さんの考えを聞くところからはじめるので、応対の音声を聞いて考えてきてね」と宿題を出すようにしたのです。すると次の面談では、私が補足でフィードバックすることがないくらい、的を射た答えを考えてきました。長年、毎日電話を受けているオペレーターのため、言語化する機会がなかっただけで、お客さまにとって何が大切かはわかっているのですね。コーチングの大前提は「答えは相手のなかにある」です。本人が答えをもっていることにあらためて気づかされた経験でした。

 

リーダーが質問力を身につけるには?

では、どうしたら質問力が身につくでしょうか。実際には、面談の場ですぐによい質問は思い浮かばないです。私も部下との面談の場面で、どんな質問をすればよいかわからず、焦ったこともあります。

 

ネットで検索するとコーチングで使えるたくさんの質問が出てきますので、使えそうな質問をそこから拾って使うところからはじめることをおすすめします。私も最初はよい質問ができるか不安だったので、自分で質問集をつくり、それをあんちょことして手元において面談に臨んでいました。

 

あとは部下との面談の場を多くもち、実践でトレーニングすることです。最初はうまく部下の考えを引き出せないこともあると思いますが、あきらめないでほしいです。コーチングはスポーツと同じで、実践しトライ&エラーを繰り返すことでしか身につきません。質問力を身につけられたリーダーは、部下育成、営業力、折衝力、調整力、などで大きな力を発揮できます。

 

できれはリーダーには、まずリーダー自身がコーチングを受け、質問の効果を実感してほしいと思います。コーチを探すサイトもありますので活用してみてください。お試しコーチングとして1回目は無料でコーチングを提供している方もいます。有料ではありますが、リーダーの自己投資として非常に効果が高いものだと私は思います。